こんにちは。新米クリスチャンのカサイと申します。今日もお目に留めていただき、ありがとうございます。
今年もイースター(復活祭)が近づいてきました。クリスチャンにとってイースターは、イエス・キリストの復活をお祝いする大切な日。それまでの40日間は準備期間として、祈りや断食(節制)、愛の行い(慈善)を通して、改めて心を神様に向ける時間を持ちます。
あるとき、キリスト教の教派の一つである聖公会では、この準備期間に毎日少しずつお金を献げ、イースターを終えると集めた献金を国内外の宣教や伝道のために用いているという話を聞きました。
調べたところ、「大斎克己(たいさいこっき)献金」と呼ばれるこの習慣は、1950年から守られているものだそうです。献金の具体的な使い道も示されていて、2021年度は児童養護施設の建設や緊急災害援助、アジア・アフリカ支援などさまざまです。
そこで今回は、日本聖公会・東京聖テモテ教会の太田信三司祭に、イースターのために特別にささげる「大斎克己献金」や、この期間をどのように過ごしているのか教えていただきました。
Q.大斎克己献金は歴史のある習慣なんですね。
「聖公会ではイースターまでの準備期間を、大斎節(たいさいせつ)と呼ぶのですが、私の記憶では、物心がついた頃から、この期間になると大斎克己献金の封筒が家の大切なところに鋲止めされていました」
Q.ご両親には、どのように教わっていたのでしょう?
「親からは、特に口頭で教えられたという覚えはありません。大斎始日(灰の水曜日)の夜には教会へ連れて行かれ、灰の十字のしるしを額に記されたこと。食事が少し質素になること。両親が節制し始めること。大斎克己献金の封筒があること。教会に行けば祭色が紫(※1)に変わり、礼拝堂を飾る花がなくなり、礼拝では大栄光の歌などが歌われなくなること・・・。こんな風に、礼拝と生活のなかで、五感を通して教えられてきたように思います」
(※1)聖公会では紫は悔い改め、慎み、待望を表す色。降臨節(クリスマスまでの期間)やイースターまでの準備期間に用いられるそうです。
「それから、もうひとつ記憶にあるのが、“克己”という言葉について、自分なりに考えたことです。漢字の意味などを考える年頃になり、『己に克つ』ってすごく強い言葉だなと思ったことがありました。“自力”っぽくて、教会らしくないなあと感じたんです。けれども、ある人に言われた『信仰とは戦いだよ!』という言葉を受けて、やはり自力の側面も大事だよな、と思ったり・・・。後に教会での洗礼式にて、『あなたは(中略)悪の力と戦いますか』という問いに対して、洗礼志願者が『神の助けによって戦います』と応えるのを見て、そうか、信仰とは戦いだけど、神の助けによる戦いなのか!と確信したことを思い出します」
Q.確かに己に克つためにこそ、神様の助けが必要なように感じます。聖公会ではこの時期をどのように過ごされますか?
「聖公会のことを一括してお答えすることは難しいですが、“大斎を失うことは一年を失う”という言葉があり、教会暦において最も大切だといわれています。
大斎始日と聖金曜日(受苦日)は断食日です。各教会では大斎節に合わせ、黙想会などさまざまなふさわしいプログラムが企画されます。十字架の道行き(※2)を行う教会や、古代からの習慣通り、洗礼準備を呼びかける教会、イースター前夕からささげられる礼拝(イースターヴィジル)で洗礼式をささげる教会も多いです。ほかにもこの時期は、重要な礼拝が目白押しです」
(※2)聖公会やカトリックでは聖堂の壁に、イエス・キリストが捕らえられ、十字架の死に至るまで(復活までを描いたものも)を描いた14場面の絵画やレリーフ(留・りゅう)が掲げられています。この留を一つひとつ辿りながら、黙想し、祈りをささげることを「十字架の道行き」といいます。
その一人はすべての人のために死んでくださった。その目的は、生きている人たちが、もはや自分自身のために生きるのではなく、自分たちのために死んで復活してくださった方のために生きることなのです。
[コリントの信徒への手紙2:15 新共同訳]
個人的な感覚ですが、イエス・キリストの受難を想い、その愛にふれるたびに、いつもより少しだけ、優しくなれるような気がします。そして『隣人を自分のように愛しなさい』(マルコ12:28)というキリストの言葉に込められた意味を改めて考えるのです。
さて、今年のイースター、今これを読んでくださっているあなたはどんな風に過ごされますか? こちらで灰の水曜日(レント)やイースターについての解説もしているので、ぜひご覧くださいね。
◇教えてくれた人
太田信三(おおた・しんぞう)さん
日本聖公会司祭・東京聖テモテ教会教師・東京諸聖徒教会管理牧師。聖公会の家庭で生まれ育ち、洗礼を受ける。大学卒業後、社会人経験を経て30歳で聖公会神学院に入学。