中国・家庭教会への弾圧と香港教会の支援 倉田明子准教授に聞く

 

中国ではこのところ、自発的に組織された政府非公認の「家庭教会」が取り締まりの対象となっている。昨年12月、中国四川省成都市にある秋雨聖約教会の牧師らが拘束・連行され、一時期、100人以上の信徒の行方が分からなくなった事件は記憶に新しい。

その後に開設されたフェイスブック・ページ「秋雨聖約教会のために祈ろう」によると、12月22日の時点で教会員150人以上が一時拘束され、5人が行方不明。また、700人近い教会員も当局の監視下に置かれ、教会が入っていたビルのうち、礼拝堂や図書館、神学校などとして使われていた階のすべての設備が強制撤去された。28日においても、牧師夫妻をはじめ25人が逮捕されたままだ。

2017年の香港返還20周年に合わせ、返還記念日前日の6月30日夜に開かれた祈祷集会の様子。黒衣での礼拝運動を提唱した使命公民運動と香港基督徒社関団契が主催(写真:倉田明子さん提供)

この事態を受けて、香港のプロテスタント教会の信者数百人が12月23日と30日の礼拝に黒い服を着て参列した。

それを呼びかけたのは、使命公民運動、教牧関懷団、基督徒関懷香港学会、循道衛理聯合教会馬鞍山堂社会事務関注委員会、香港基督徒社関団契の5つの団体と100人の発起人。弾圧を受けている教会への連帯を表明し、「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶ」(1コリント12:26)という聖句から、「黒い服を着て、苦しんでいる中国の教会を覚えて祈ろう」とフェイスブックを通して呼びかけた。

中国政府の動きや香港の教会の行動について、東京外国語大学総合国際研究院准教授(中国近代史)の倉田明子さんは次のように話す。

2018年2月に新「宗教事務条例」が施行されてから、家庭教会に対する取り締まりが強化されており、9月には北京で最大規模の家庭教会だった錫安教会も取り締まられました。今回の秋雨聖約教会に対する取り締まりはこうした流れの延長線上にありますが、100人以上の信徒が拘束され、しかも王怡牧師の逮捕理由が「国家転覆罪」というきわめて重い罪状であったことは衝撃的でした。

公認教会である三自愛国教会の諸教会でも、当局の指導による未成年の礼拝参加禁止が広がっていると聞きます。一般の人々に対して、ハロウィンやクリスマスといった「西洋の祭り」を祝うことをやめるよう呼びかける地方当局もあったようです。中国全体として、宗教、特にキリスト教に対する警戒感とコントロールが強まっているように思われます。

ただし、中央政府の統一的な政策というより、一部の下部組織が上部を忖度(そんたく)して過剰に対応している面も否めません。今後、習近平政権としてこの事態にどう反応するかが注目されます。

香港に関しては、秋雨聖約教会の取り締まりにも素早く反応し、黒衣での礼拝参加という具体的な行動を呼びかける動きがあったことは注目すべきことだと思います。香港の教会は歴史的にも中国大陸と関係が深く、中国における信教の自由の保証や民主化といった面でも、積極的に支援する信徒や教会関係者が少なくありません。

中国政府は近年、「法治国家」を強調するようになっていますが、実態は、政権が時々に定める基準に従って人々を統制しています。普通選挙をめぐるデモ活動「雨傘運動」以降、香港の人々の間には中国との距離感をめぐって分断も起きていますが、信教や報道の自由が保たれている香港が、キリスト教をはじめ、中国内のさまざまな敏感な問題をめぐる動向をいち早くキャッチし、世界に発信する意義は大きいでしょう。

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