中国四川省成都市にあるプロテスタントの地下教会(政府非公認教会)である秋雨聖約教会で、治安当局による一斉家宅捜索が9日夜に行われた。その後、王怡牧師を含めた教会指導者らが拘束・連行され、100人以上の信徒の行方が分からなくなっている。これまでに一部が解放されたが、自宅で軟禁されている信者もいるという。
無神論の立場を取る中国共産党は、その支配を維持するため、何十年にもわたって宗教団体をコントロールしようとしてきた。キリスト教に対しても、その影響力の拡大を警戒し、政府公認の教会を作るとともに、政府に公認されていない地下教会への締めつけを強めている。今年2月に宗教問題を統治するための新たな規制も発効され、地下教会に対する刑罰が強化された。
一方、中国とバチカン(ローマ教皇庁)は長年、国交を断絶してきたが、9月22日、司教任命権をめぐって暫定合意した。バチカンの承認がないまま中国政府が任命した8人の司教(うち1人は死亡)を教皇が正式に追認し、中国は教皇をカトリック教会のトップと公認するというもの。全世界の司教を任命する権限は教皇にあるが、中国はこれを内政干渉として1951年に国交を断絶し、以来、バチカンの承認なしで司教を選んできた。
同年に設立された国家宗教事務局は、プロテスタントとカトリックの存在を認めているが、中国政府が公認した教会組織は以下のとおり。カトリックでは「中国天主教愛国会」があり、信者は約550万人で、教皇の叙任権・管轄を認めず、バチカン側からも認められていない。プロテスタントでは「中国基督教三自愛国運動委員会」(世俗的な面での指導機関)、「三自愛国教会および中国基督教協会」。ほかに「中国正教会」もある。
人口14憶人弱の中国には、カトリックとプロテスタントの信者が、政府非公認の地下教会の信者を合わせると1億人以上いるといわれているが、その実数は定かではない。カトリック信者も、地下教会のほうが多い。米ニュースサイトのハフポストによると、中国のキリスト教徒は2030年までに2億4700万人となり、米国を抜いて世界最多になるとの試算もある。
中国のクリスチャンの半数以上は地下教会の信者だが、政府による取り締まりの対象となっている。中国当局は、十字架を破壊し、聖書を燃やし、教会を閉鎖し、信者に棄教するよう命じるなど、弾圧を強めている。
今後、中国はバチカンとの関係改善を進める意向で、教皇フランシスコの早期訪中を求めている。10月にあった世界司教会議には中国から二人の司教が初参加し、教皇に直接、訪中を要請した。また、中国の故宮博物院とバチカン美術館が美術品40点を交換し、今年3月にそれぞれ展覧会を開催したが、それも中国とバチカンの関係改善を目指す取り組みの一環という。