【パリ=共同】フランスのカトリック教会は8日、未成年時に聖職者らから性的虐待を受けた国内の被害者が1950年以降で推計33万人に上るとした調査報告書を受け、被害を認定する独立機関を設けて被害者へ補償金を支払うことを決めた。教会の不動産を手放し、基金に充てる。フランスのメディアが伝えた。
南西部ルルドで開かれたフランスの司教協議会は、カトリック教会で過去70年間に起きた未成年者の性的虐待被害に関し、教会の組織的責任を認めた。法律家をトップとする独立機関は、被害の申告を受けて事実を確認し、被害に応じた補償を行う。
司教協議会のエリック・ドムーランボーフォール会長は記者会見で、補償金支払いに必要であれば「(教会が)借金することもできる」と述べた。
司教協議会は再発防止に向けた具体的な措置も協議。未成年者と接触する聖職者は全て犯罪歴を確認すると決めた。
1950~2020年にあったカトリック教会の聖職者による性的虐待を調査する独立委員会は、先月5日、2500ページ近くに及ぶ報告書を公表。21万6000人の未成年者に対する虐待があったことを明らかにし、数十年間にわたり「沈黙のベール」で隠蔽(いんぺい)されてきた「大規模な現象」と表現した。被害者の「大部分」はさまざまな生い立ちの思春期前の少年だった。
ドムーランボーフォール氏は当時、この調査結果について「恥と恐怖」を表明。フランシスコ教皇も、「大きな悲しみ」を感じていると述べた。
この日の決定に先立ち、首都パリでは6日、被害者でつくる団体が教会側に早急な対策を求めようと集会を開き、被害者の証言などが報告された。集会に参加した46歳の男性は「被害者は性的虐待を受けたことを恥だと感じてしまいますが、恥ずべきなのは教会側です。長年保たれてきた沈黙を破っていきたい」と話している。