愛から生まれた言葉はいつもやさしい 『やさしさの贈りもの』 片柳弘史 著

『やさしさの贈り物 日々に寄り添う言葉366』 (教文館・900円+税)

「キリスト教書店大賞2021」を受賞した同書は、SNSで10万超のフォロワーに支持される片柳弘史神父(カトリック・イエズス会司祭)が、毎日SNSに投稿する言葉を厳選して1冊の本にまとめたもの。『こころの深呼吸』『始まりのことば』に続くシリーズ第3弾で、苦しみを背負って生きる人たちに贈る366の愛の言葉が、1月〜12月まで1日ごとに綴(つづ)られていく。

幸せになりたいなら、「どうしたら幸せになれるか」ではなく、
「どうしたら誰かを幸せにできるか」
と考えましょう。
幸せの扉は、自分のために
開けようとしても開きません。
幸せの扉は、誰かのために、
開けようとしたとき開くものなのです。(本文より)

辛くなったり、傷ついたりするのは、目に見えるような大きな出来事だけでなく、むしろ自分にしか分からない小さな出来事のほうが多いのかもしれない。同書は、そんな苦しみをひっそりと胸に抱え込んでいる人たちを、やさしい言葉が記された「言葉の庭」へと招いてくれる。そこはまさに「片柳神父ワールド」。そんな癒(いや)しの言葉を綴(つづ)り、発信し続ける著者の片柳神父に話を聞いた。

──この本はどのページを開いてもやさしさに満ちあふれています。やさしさを文章に染み込ませる特別な方法があるのでしょうか。

この本は、毎日、SNSを通して配信している言葉の中から、特に1日の最後に配信する言葉を集めたものです。今日一日を振り返り、神さまからいただいた気づきのお恵みを、短い言葉にしてみなさんにお届けする。そんな気持ちで言葉を紡いでいますので、読まれた方がやさしさを感じたとするなら、それは神さまのやさしさ、神さまの愛やぬくもりなのかもしれません。

──コロナ禍などもあり、現在心が疲弊してしまっている人たちも大勢いますが、本によって励まされたり、勇気づけられたりする人も少なくありません。キリスト教書を含む、本というものの役割をどのように感じてらっしゃいますか。

スマホやパソコンの画面と向かい合うときは、どうしても、次々と表示される別の情報に気が散ってしまいがちですが、本と向かい合うときには、目の前にある紙とその上に印刷された文字だけに集中することができます。他のことをすべて脇において、本と向かい合うときに生まれる心の静けさ。静けさの中で著者の言葉に耳を傾け、その言葉をゆっくりかみくだいて自分の栄養にしてゆく喜び。そこに、紙の本の魅力があるのではないでしょうか。

福音宣教の中心は、人と人との出会いであり、顔と顔を合わせた対話である。それは間違いないと思いますが、本には時間と空間を越えて人と人とを出会わせ、心の対話を実現する力があると思っています。本を通してわたしたちは、パウロや書簡を残した使徒たちはもちろん、イエス・キリストご本人とさえ対話することができるのです。

──今回、キリスト教本屋大賞は2度目になります。毎年たくさんの本が出版される中でこれは本当に快挙だと思います。「書く」ということは、神父様に与えられた特別な賜物と思えてならないのですが、今後「書く」ことをとおしてどのようなことを伝え広めたいとお考えでしょうか。

わたし自身、これまで何千冊もの本によって養われ、支えられ、育てられてきました。今でも、部屋の中はいつも本だらけです。新しい本を生み出すことによって、本に少しでも恩返しできたらいいと思います。

わたしが目指しているのは、聖書の言葉、福音のメッセージを、現代を生きる普通の人でも分る言葉で表現することです。教会の中にいると、どうしても、相手にも信仰があることを前提とした言葉づかいになってしまいがちですが、残念ながらそのような言葉は信仰をもたない人たちの心に届きにくいのです。まだキリストと出会っていない人たちに、どうやってキリストのすばらしさを伝えてゆくか。福音のメッセージを、一人でも多くの人々の心に届く言葉で表現できるか。そこが、宣教者の腕の見せどころだと思っています。

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