第27回アジアキリスト教病院協会総会(ACHA)が11月7日から9日までの3日間、沖縄県那覇市のホテルコレクティブとオリブ山病院を会場に開催された(日本キリスト教病院協会主催、オリブ山病院、アドベンチストメディカルセンター共催)。主題は「世界的危機におけるキリスト教病院の役割:経済危機、自然災害、そして世俗主義」、主題聖句にはコリント人への手紙 第一15章58節「ですから、私の愛する兄弟たち。堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励みなさい。あなたがたは、自分たちの労苦が主にあって無駄でないことを知っているのですから。」(新改訳2017)が掲げられた。
ACHAは1993年、淀川キリスト教病院の白方誠彌(せいや)名誉院長の呼びかけにより、「日韓台キリスト教病院最高経営者会議」としてスタート。その後、2012年にACHAへ改称され、広くアジア諸国のキリスト教病院関係者が参加するようになった。今回の総会に向けて白方氏は、祝辞でこう述べた。
「2012年より日韓台キリスト教病院経営者会議がアジアキリスト教病院協会へと発展しました。日本では2014年、19回総会を沖縄でオリブ山病院、2017年、22回総会を淀川キリスト教病院が担当しました。2019年には24回総会をBangkok Christian Hospital が担当されました。従来の日・韓・台キリスト教病院以外で初めての担当であり画期的な出来事でした。27回総会は、再びオリブ山病院が担当されて開催される事を心よりのお慶び申しあげます。
第二次世界大戦前後に、アジアの多くの国々が欧米のミッションの援助を受けました。個人的な事で恐縮ですが、淀川キリスト教病院は、まさに米国長老教会の援助によって、当時最も医療事情の悪かった地域に、大きな恩恵を与えて頂きました。私自身、第二次世界大戦がどれ程悲惨であったかを身をもって体験しましたが、今再び絶対避けねばならない第三次世界大戦の前夜にあるような不吉な予感さえ覚えます。世界全体を見れば、まだまだ貧困の中に放置されている人々が多くおられ、医療支援の必要性も極めて高いのが現状であります。
今回の主題について十分な討議がなされ、さらに、主にある良き交流がありますようにお祈りいたします」
ACHAは、2022年に韓国で開かれた前回までは毎年開催されていたが、その後からは隔年開催となった。また、従来はキリスト教病院の医療従事者のみが参加していたが、今回からはキリスト者の医療従事者であれば、キリスト教病院に所属していなくても参加可能となり、これまでになく多くの参加者があった。海外からは韓国、台湾、タイ、シンガポール、ミャンマー、米国から87人、日本国内は80人、総勢167人、さらに部分参加も含めると200人を超える参加者があった。
総会期間中は講演をはじめとする学会としてのプログラムが行われた。1日目は、胃がん切除手術の世界的権威として知られ、現在淀川キリスト教病院の理事長である笹子三津留氏が基調講演を行った。特に昨今の経済危機は病院経営にも大きな影響を与えており、存続も問われる危機感が感じられた。さらに頻発し規模も大きくなり、だれもが他人ごとではない自然災害への備えと対応が問われていることを覚えることができた。さらに世俗主義では物質主義と世的な成功への誘惑に注意が向けられた。
2日目は、「経済危機」「自然災害」「世俗主義」をそれぞれテーマにしたシンポジウムが計行われ、韓国、台湾、日本、タイからの発題者と討議者が登壇し、活発な議論が行われた。
3日目は、オプションセミナーがオリブ山病院で開催され、全人医療研究教育所(Institute of whole person healing、顧問柏木哲夫、所長田頭真一)の公式のセミナーが開催された。講演者は韓国全州市プレスビテリアンメディカルセンター・イエス病院のイ・デヨン医師。同氏は、医師であると同時に米国のコロンビア国際大学より異文化宣教学で博士号を取得。牧師であり中東地区への宣教師として働き、現在はイエス病院の緩和ケア部長であり2022年の韓国でのアジアキリスト教病院協会総会の会長を担った。
プログラムはすべて英語で行われたが、日本語の同時通訳が提供され、今総会の大会長で、オリブ山病院を運営する社会医療法人「葦(あし)の会」理事長の田頭(たがみ)真一氏は、大会を終えて次のように振り返った。
「参加各国の医療伝道における危機的な状況とともに、それを乗り越えるための聖書的な視点、今の世界情勢におけるキリスト教病院の役割が真摯に討議され、これからのアジアのみならず世界でのキリスト教病院の働きに対して大きな示唆を与えました。ACHAのメンバーは、国は違ってもキリスト者として、病む人々に仕えることを召命と信じ、喜びを持って医療を行っており、各国のキリスト教病院から期待以上の励ましとこれからの協力を得ることができました」
2026年の開催は台湾、台南市、28年はタイ、チェンマイとなっている。これから世界的な困難の深まりを感じつつも、病める人への全人的ないやしを目指して一致して進むことを確認、お互いに励まされて帰途についた。
(報告=田頭真一)