法政大学大学院 シンポ「地域社会の課題を考える」で牧師が子ども食堂の実践紹介

法政大学大学院政策創造研究科(増淵敏之科長)主催のシンポジウム「地域社会の課題を考える――人への思いが持続可能な街づくりを実現させる」が3月16日、法政大学市ヶ谷キャンパス(東京都千代田区)で開催され、日本基督教団新居浜教会牧師の広瀬香織氏が基調講演を行った。

広瀬氏は冒頭、全国の子ども食堂が1万箇所近くに上り、特にひとり親家庭での相対的貧困が深刻であることを紹介。自身が共同代表として運営する子ども食堂は、子どもの貧困が全国的に問題視されるより前の2004年に開始した。当初はオウム真理教などの影響もあり、地域からの支援もなく、「母親を甘やかすな」「浮浪児を集めて何をやっているのか」と批判されたという。

そもそも子ども食堂を始めた契機は、ひとり親家庭でいじめにも遭い、教会に逃げ込んできた中学1年生のK君との出会いだった。教会を居場所として提供し、生活力をつけるための支援をする中で、弟と妹共々自立できるまでに成長した。その変化に驚いた学校関係者や児童相談所の所長らが、教会を訪ねてきたという。それが後の子ども食堂や学習支援活動につながり、2016年、正式に「新居浜子ども食堂中村松木店」を名乗ってからは、社会情勢の変化とともに市民権を得て協力者が次々に与えられるようになった。

「私は居場所を提供し、ひたすら褒めて勉強や料理を教えただけ」と広瀬氏。1人の男児から始まった子ども食堂にボランティア、企業・団体、公的機関を含め3000人近い人々が関わり、延べ3万人以上が利用してきた。「子ども食堂は温かい食事だけでなく、温かいつながりと居場所を提供する場。1人の存在が大切にされる社会は、皆が住みやすい社会」と結んだ。

続けて山下舞子氏(株式会社明治ホールディングスサステナビリティ推進部企画グループ長)の基調講演、パネルディスカッションが行われた。登壇したのは講師2人のほか、精神疾患の親をもつ子ども・若者の支援団体NPO法人「CoCoTELI」代表の平井登威氏、法政大学政策創造研究科准教授で消費者政策を研究する柿野成美氏、株式会社ローソンSDGs推進室アシスタントマネジャーの合田早紀氏(同研究科修士課程1年)。同研究科教授の小方信幸氏がモデレーターを務めた。

それぞれの企業・団体が取り組む持続可能な街づくりについて報告され、特にキーワードとして注目された「エシカル(倫理的・道徳的)」な消費行動について広瀬氏は、「キリスト教的にいうと隣人愛に基づく行動」と表現し、教会と地域社会が課題解決のために協働し合える可能性について示唆した。

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