宗教団体の後継者のあり方や、継承における課題を考察する公開シンポジウム「若者の宗教性はどう涵養されるのか、されないのか。どこで、誰に。」(庭野平和財団主催)が3月13日、オンライン開催された。中條暁仁(静岡大学准教授)、石橋大輔(日本バプテスト連盟札幌バプテスト教会牧師)、猪瀬優理(龍谷大学教授)の3氏がそれぞれ、仏教、キリスト教、新宗教(創価学会)の事例から発表。司会は丹羽宣子氏(立教大学助教)が務めた。
人口減少地域における寺院の調査に基づいて、住職の代務化(無居住化)が進む実態を紹介した中條氏は、檀家だけでなく寺族(住職の家族)でも寺離れが進み、後継者の確保が大きな課題となっていることから、「少人数の僧侶(教師)でも、広範に分布する寺院を支えやすいシステムにしていく」「住職や寺族が兼職しやすい環境を整えていく」などの具体策を提起した。
牧会上の事例を交えながら報告した石橋氏は、かつて青年たちに特化して「配慮」した結果、教会運営の中枢から若者たちを排除してしまう形になったとの失敗談を共有。生活上の困難を抱え、教会が自立のために支えてきた若者たちが、課題を克服すると教会を離れていってしまうという事例も紹介し、理想的な青年・若者像を描き、組織としての都合や期待を押し付けないことの重要性を強調した上で、「次世代を信じることからしか継承は始まらない」と呼び掛けた。
また、2018年の北海道胆振東部地震やコロナ過での経験から、地域の人々を教会に招こうとしながら「出会おう」とはしてこなかったとの反省から、地域に「出ていく」取り組みとして、弁当の無料配布やお祭りの企画などを始め、そこに若者たちも巻き込まれていった経緯も報告した。
猪瀬氏は、2011年刊の自著『信仰はどのように継承されるか――創価学会にみる次世代育成』にも触れつつ、「親のもつ信仰や所属する宗教集団への所属を子が継承・継続することで、若者の『宗教性』が涵養されたといえるのか」と問いかけ、教団からの期待が大きいゆえに内心を言語化しにくいという2世の特性についても触れた。
後半のパネルディスカッションでは、コメンテーターの寺田喜朗氏(大正大学教授)を交え、宗派を問わず共通する課題について意見を交わした。