カトリック正平協 米大統領選後の学習会で中野晃一氏 混迷を極める国内外の情勢を分析

日本カトリック正義と平和協議会改憲対策部会(光延一郎部会長)は大統領選直後の11月8日、アメリカに長期滞在中の政治学者、中野晃一氏(上智大学教授)を招いたオンライン学習会「米大統領選 これからの世界情勢と日米関係」を開催し、世界情勢が混迷を極める中、平和構築における市民社会の役割と展望などについて模索した。

中野氏は特に注目すべき点として、トランプ氏再選後の国際秩序の変容を挙げ、「トランプ氏は『ビジネスマン』としてのアイデンティティが強く、同盟国に対してより多くの金銭的負担を求める可能性が高い」と警告。日本に対しても軍事費増額や基地負担の要求が強まる可能性を示唆した。

国連の役割については、「アメリカが国連を使うつもりがないことが機能不全の最大の要因」としながら、「国連がなければガザでの人道支援も不可能。存在意義は依然として大きい」と強調した上で、中東情勢についてはガザの状況が今以上に悪化する可能性が高いと分析した。

第二次石破政権については、「自民党内の安倍体制が終焉を迎えた」と指摘しつつ、立憲民主党の野田佳彦代表就任で表面化した保守二大政党制への動きについて、「実質的な政権交代の可能性は依然として低い」と分析した。特に対米関係において「主権者はもはや日本国民ではない」との厳しい見方を示した。

また、「暮らしが苦しい人々や社会から取り残されていると感じている人々とのつながりを深めることが根本的に重要」と述べ、「戦争が起きれば、最も弱い立場の人々が真っ先に影響を受ける」と警鐘を鳴らした。

最後に主催者を代表してあいさつした光延氏(イエズス会司祭、上智大学教授)は、教皇フランシスコの平和への取り組みにも言及し、「世界の首脳と会って平和を訴えているが、なかなか聞いてもらえない」と吐露した苦悩を紹介。「バチカン放送」などを通じた平和の発信を続ける姿に倣い、継続的な平和を希求する活動の意義を確認した。

関連記事

この記事もおすすめ