日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長、エドガル・ガクタン担当司教)は11月8日、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)のノーベル平和賞受賞を祝福する声明を発表した。
声明は、「核兵器が存在する限り、核兵器使用のリスクは永遠になくなりません」と訴え、これまで被爆者が語ってきた被爆の実相に世界が向き合い、学び、核兵器使用が迫る危機的状況を乗り越えていかなくてはならないと強調。カトリック教会も被爆者とともに「核なき世界を目指して」歩むことをあらためて決意し、被爆国である日本、そして核保有国が、核兵器禁止条約の署名・批准に向けて動き出すことを願い、働きかけていくことを誓った。
声明の全文は以下の通り。
日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞を祝福します
被爆80周年となる2025年を前に「2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与される」との発表がありました。「二度と核兵器を使ってはならない、世界に核兵器はいらない」と訴えてきた被爆者の活動が高く評価されたものであり、これまで活動を積み重ねてこられた日本被団協の皆様には、心より敬意を表し、受賞をお慶び申し上げます。
1954年、太平洋のビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験で、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」が被爆したことをきっかけに、「核実験反対」「核兵器反対」の声が全国的に高まる中、日本被団協は1956年に被爆者の全国組織として結成され、被爆の実相を伝えるために国内はもとより、海外でも講演や被爆証言などを積極的に積み重ねてこられました。
これまでに被爆者の皆様が語ってこられた凄惨な被爆の実相が、国際社会における核兵器の非人道性を明らかにし、広島・長崎の原爆投下以降、今日まで、戦争による核兵器使用を阻む最も大きな力となってきました。ノルウェー・ノーベル委員会が「核のタブーの確立に大きく貢献してきた」と述べているように、被爆者の皆様が果たしてこられた役割には非常に重要なものがあります。
ノーベル平和賞の授与が発表された10月11日は、教皇ヨハネ二十三世の記念日にあたります。教皇ヨハネ二十三世は、東西冷戦下の1960年代初頭、キューバ危機(アメリカ合衆国と旧ソビエト連邦の衝突の危機)の回避のために尽力しました。また回勅『パーチェム・イン・テリス-地上の平和』の中で、「正義、英知、そして人間の尊厳の尊重のためには、軍備競争に終止符が打たれること、既成の軍備が同時かつ平衡的に縮小されること、核兵器が禁止されること、そして最後に、有効な監視を伴っての軍備全廃達成が切実に要求されます」(60)と強調しています。さらに「軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります」(61)とも述べています。
今、世界では、ウクライナやパレスチナのガザ地区、およびその近隣諸国での爆撃行為がエスカレートする中、紛争当事国による核兵器使用の威嚇が繰り返され、核兵器使用が一段と現実味を帯びています。核兵器が存在する限り、核兵器使用のリスクは永遠になくなりません。被爆者が「二度と自分たちと同じおもいを他の誰にもさせるわけにはいかない」「核と人類は共存できない」と語ってきた原点は被爆の実相であり、今こそ、世界はそこに向き合い、学び、核兵器使用が迫る危機的状況を乗り越えていかなくてはなりません。
カトリック教会では、教皇ヨハネ・パウロ二世と教皇フランシスコが被爆地広島、長崎を訪れ、世界平和と核兵器廃絶を強く訴えてまいりました。ここに、わたしたちも、被爆者の方々とともに「核なき世界を目指して」歩むことをあらためて決意し、このノーベル平和賞を機に、とくに被爆国である日本、そして核保有国が、核兵器禁止条約の署名・批准に向けて動き出すことを切に願い、働きかけてまいります。
これまでに亡くなられた被爆者の方々に心から哀悼の誠を捧げるとともに、今なお、苦しみの中にいらっしゃる皆様方への十分な支援・補償体制が確立することを願います。
2024年11月8日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 ウェイン・バーント
担当司教 エドガル・ガクタン
協議会一同