長電話にどう対応? 平山正実 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.教会員からかかってくる長電話にどう対処すればよいでしょうか?(40代・牧師)

心病む人々の心の平安のために、電話によるカウンセリングが大変役に立っていることはよく知られています。教会も心に悩みをかかえる人々が集ってくるために、今後、電話による相談の需要はますます増えてくるものと思われます。その際、悩みの受け手である牧会者や信徒などの援助者の間でいつも問題になるのは、長電話に対してどう対応すべきかということです。特に、夜間や多忙時の長電話への対処法が話題になります。

電話による相談も、立派なカウンセリングの一つであるという認識に立つならば、それは広義の精神療法の一種であり、枠組みや限界設定が必要になります。

相談者に対して援助者が、枠を作って差し上げることが、逆説的ではありますが彼らの自由や安全を守ることにもなるからです。

もし、相談者に無制限に時間を与えてしまえば、相手の自我はどんどんふくらんでいき、自分自身をコントロールできなくなると共に、相手を操作したり、過度に依存するようになったりして、その人の心の病の癒しや人格の成長に役に立たない結末となるでしょう。また援助者に多大の犠牲を強いた場合、相談者は罪責感をもつようになり、そのことが自閉的態度をとらせ、自由なコミュニケーションをとることを阻害することもあります。

ただし、限界設定を行う場合、次回の約束をきちんとして、かかわりに対して一貫性を持たせることは大切だと思います。相談者が限界設定に対して怒りの感情を表した場合、援助者はなぜ彼らがそのような態度をとったのか冷静に分析し、次回の相談時に、その分析結果を生かす必要があります。さらに、相談者側の逆転移感情の有無を自己評価すること、つまり自分の感情に巻き込まれて、相手への関心や注意を失っていないかどうかということや自らの自我の弱さのために相手を怒らせているのではないかという自己洞察や内省も必要でしょう。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

ひらやま・まさみ 1938年、東京生まれ。横浜市立大学医学部卒業。東洋英和女学院大学教員を経て、聖学院大学子ども心理学科、同大大学院教授、医療法人財団シロアム会北千住旭クリニック理事長・院長、NPO法人「グリーフ・ケア サポート・プラザ」(自死遺族支援)特別顧問を歴任。精神保健指定医。著書に『精神科医からみた聖書の人間像』(教文館)、共著に『イノチを支える-癒しと救いを求めて』(キリスト新聞社)など。2013年、75歳で逝去。

【既刊】『教会では聞けない「21世紀」信仰問答Ⅱ -悩める牧師編』 上林順一郎監修

関連記事

この記事もおすすめ