聖書講義を超える、講解”説教”の本来のあり方を示す説教集
〈評者〉牧田吉和
大いに喜んで
ヨハネの手紙第二、第三講解説教
朝岡 勝著
B6判・160頁・定価1980円・教文館
本書は「愛の手紙」と呼ばれるヨハネの手紙の第二・第三に関する連続講解説教集である。収められている九編の説教は、著者が二〇年にわたって牧師として仕えてきた群れのために、群れを辞し、新しい任に就こうとする狭間の中で、しかもコロナ禍、会堂建築のただ中でなされたものである。パウロのエペソの長老たちへの告別説教にも似た、去り行く群れへの牧会者の全ての思いが込められた説教集である。
一読して思わされることは、説教者としての著者の姿勢である。著者自身がキリストにおける神の愛に捉えられ、生かされ、動かされつつ牧師・伝道者として全身全霊をささげて説教をしているという事実である。「大いに喜んで」という本書のタイトルは何よりも説教者自身の思いを言い表している(一二九─一三一頁)。この意味で、本書に収められた説教は「キリストの愛に生かされた説教者が、キリストの愛に生かされた群れの一人一人に、キリストの愛に生き続けるように、大いなる喜びに生き続けるように促してやまない説教」と性格づけることができる。「愛の手紙」といわれるヨハネ書簡の性格と見事に響き合って語られた説教である。(つづく)