Q.キリスト者の教員が公立学校で自らの信仰を語ってはいけませんか?(40代・公立学校教員)
教育基本法第15条は第1項で「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない」とし、第2項で「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と定めています。
法は、宗教が人格の完成に重要な働きを持っていることを積極的に承認しつつ、政教分離原則から特定の宗教教育をすることを明確に禁じています。公立学校の教師が教壇から特定の宗教のための宣伝、布教するようなことは許されません。
ただし、自分がどのような信仰を持っているのかについて、児童生徒に紹介する程度のことは許されていると考えます。むしろ、そのことにより、教師はより厳格な宗教的中立性を求められるとも言えます。
私は、ずいぶん前に日曜日訴訟という裁判を担当しました。教会学校に出席する場合には日曜日の学校行事への出席を義務づけないようにという裁判です。この裁判では、国が宗教教育の重要性を認めつつ公立学校での宗教教育が禁じられていることを挙げて、国は教会学校など、学校外における宗教教育の場を尊重しなければならないのだと主張しました。宗教教育を担うのは教会だということは、強調されなければならないと思います。
教師の信教の自由についても述べておきましょう。音楽の教師が君が代のピアノ伴奏を断り、処分されたことで裁判になりました。目に見えない、多くの人にとって重要と思われないことでも、その人にとっては尊厳を持って生きていく上で欠くことのできない自由、それが信教の自由です。これは公立学校の教師にも認められるはずです。
宗教を重んじるとは、人が特定の宗教(宗教一般ではなく)を信じることを尊重することです。一人の神を信じる立場から、君が代を伴奏することが苦痛であると言っているのに我慢しろとは、なんと了見の狭いことでしょうか。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
おおしま・ゆきこ 弁護士。1952年東京生まれ。72年受洗。中央大学法学部卒業。84年に千葉県弁護士会へ登録。渥美雅子法律事務所勤務を経て、89年に大島有紀子法律事務所主宰となり現在に至る。日本基督教団本所緑星教会員。