今なお世界中で愛され続けるいたずらウサギ、ピーターラビットᵀᴹ。1902年に絵本が刊行されてから今年で120周年を迎える。そのメモリアルイヤーに合わせた展覧会「ピーターラビットᵀᴹ展」(主催:世田谷美術館ほか)が、世田谷美術館(東京都世田谷区)で開催されている。日本初となる『ピーターラビットpeterrabbitのおはなし』の彩色画全点の展示をはじめ、スケッチ、原画、私家本、作家自身による関連アイテムなど約170点をとおして、やんちゃで可愛いピーターラビットの魅力と、作品世界の広がりを紹介する。6月19日(日)まで。
ピーターラビットの物語の源流は、作者のビアトリクス・ポターᵀᴹが1893年に、自分の元家庭教師の幼い息子(ノエル・ムーア)が病気で寝込んでしまった際、励ますために書いた絵手紙にある。その物語は絵本となり、自費出版を経て、1902年にロンドンの出版社フレデリック・ウォーン社から『ピーターラビットのおはなし』として刊行された。以後、時代を超えて読み継がれ、「ピーターラビット」シリーズは、累計発行部数が、全世界で2億5千万部を超えるロングセラーになっている。
同展では、ピーターのモデルとされるビアトリクスのペットのウサギを描いた最初期のデッサンから始まり、1902年より刊行が続く絵本の草稿から最終的な出版に至るまでの過程、そして世界的なブランドとして確立されるまでのピーターラビットの歴史を振り返る。まさにピーターラビットに特化した展覧会で、4章で構成された会場は、120回目となるピーターラビットの盛大なバースディパーティをイメージさせる。
中でも目玉は、作品の原点である〈ノエル・ムーア宛ての絵手紙〉と、絵本『ピーターラビットのおはなし』の彩色画全点が一堂に展示されていることだ。これは日本初で、絵本の象徴である彩色画全点を現行版と同じ順番で見ることができる。さらに、「ピーターラビット」以前に描かれたウサギのスケッチやイラストレーション、ビアトリクスが制作した草稿本の数々も並ぶ。これらは繊細な資料のため、通常はイギリス国外には出さないことになっているが、今回はピーターラビットの絵本誕生120周年を祝う特別な展覧会ということで例外とされた。
日本でピーターラビットが紹介されたのは1906年。イギリスで商業出版されてからわずか4年後のことだった。同展では、初めて物語の翻訳が掲載された『日本農業雑誌』をはじめ、紙芝居、朗読付きレコード絵本などが出品され、それらから初めの頃は、「ピータロー兎」「ピーターうさぎ」の名前で親しまれていたことが分かる。1971年には福音館より、ビアトリクスの挿絵による日本語版が出版されるが、翻訳者である石井桃子の手製ダミー本や、翻訳のための手書きのノートなどもファンにとっては見逃せない。
会場は、作品や貴重な資料に混ざって、あちらこちらにピーターラビットが姿を現す楽しい工夫も凝らされている。初めから終わりまでやんちゃで可愛らしいピーターラビットと共に過ごせる展覧会。訪れるすべての人に幸せな時間を提供してくれるだろう。
開館時間は、午前10時~午後6時(入場は午後5時半まで)。休館日は月曜日。 入館料は、一般 1600円/65歳以上1300円/大高生800円/中小生500円。障害者の方は500円。ただし小中高大生の障害者の方は無料。介助者(当該障害者1人につき1人)は無料(予約不要)。詳しくは、展覧会公式サイトまで。
PETER RABBIT™ & BEATRIX POTTER™ © Frederick Warne & Co., 2022