キリスト教葬儀プランナー養成塾@オンラインサロン・第1回開講記念特別講演会(主催:東京基督教大学国際宣教センターキリスト教葬制文化研究会)が7月26日、インターネット会議ツール「Zoom」を使って開催された。全国から約30人が参加した。
キリスト教葬儀プランナー養成塾@オンラインサロンは、日本初のキリスト教葬儀に特化したオンラインサロン。東京基督教大学の教授、准教授、研究員からオンライン上で、キリスト教葬儀や死生観について7回のコースで学ぶことができる。開講記念特別講演会は、本格的に学べる有料のサロンとは別に、もっと広くキリスト教葬儀について関心を持ってもらえる場として無料で開催するももの。今回の講演会を含めて全5回開催される。
この日は、東京基督教大学神学部学部長の大和昌平さんと、株式会社創世 ライフワークス社代表取締役の野田和裕さんを講師に招き、「“超高齢社会”における キリスト教葬儀の可能性!?」というテーマで対談形式による講演が行われた。
変わりつつある日本の葬儀事情
野田さん(以下、N):超高齢化社会を迎えることにより、さまざまな分野に影響を及ぼすことが予想される「2025年問題」が目前に迫ってきていますが、葬儀に注目したとき、どのようなことが考えられますか。
大和さん(以下、Y):これから日本は、団塊の世代と言われる人が75歳以上になり、2000万人以上の人が亡くなっていく大変な時代になります。この人たちは「自分らしく死にたい」というのがトレンドとなっていて、このことは仏式を当たり前としていた日本の葬儀の在り方を大きく変えていくと思っています。
N:現在でもすでに亡くなる人が急増していて、東京・神奈川では常に火葬場が追いつかないほどです。大学を卒業してから23年間、キリスト教葬儀業界で葬儀を見てきている立場から言いますと、教会も終活に向けた伝道ということにもっと目を向けるべきではないかと考えています。
Y:日本の教会はカトリックや聖教会も含め、日本の葬儀は仏式で行われるということが常識だと考え、ノンクリスチャンの葬儀については考えてきませんでした。でも、神学的に考えれば、人が命を与えられ、一生を過ごして、命を終えてるということは、神様からの大きな恵みの中でのことですから、私たちのやり方で丁重に葬ることは十分にできるはずです。
教会での葬儀に参列したノンクリスチャンが感動したという話をよく聞きます。それは、私たちが持っている信仰や希望というものが、葬儀をとおして伝わるのではないでしょうか。そういうことを考えると、キリスト教葬儀は宣教につながる希望があります。
新しい日本のキリスト教葬制文化を
N:ただ、葬儀は聖礼典の一つですし、礼拝となると仏式の葬儀とは違うという考え方があります。そういうことを、今後のオンラインサロンでのセミナーで学んでいけたらと思っています。実は、葬儀業界でも、キリスト教会への期待は大きいです。今こそ、葬儀プランナー的なことを学び、教会と協力しながら、間口を広げたキリスト教葬儀を目指していけたらと思います。
Y:商業ベースにするのではなく、キリスト教葬儀の意味をしっかり掴(つか)み、新しい日本のキリスト教葬儀の文化を作っていきたい。このことは、今後日本で宣教を行っていくうえで大きなことになっていくのではないでしょうか。
種まきの実が結ぶキリスト教葬儀
N:キリスト教葬儀で近年増えているのは、「今は教会に行っていないけれど、昔教会に行っていた」、「亡くなったおばあちゃんは、実は聖書を読んでいた」などの理由から、キリスト教式で葬儀を行ってほしいという依頼です。このように蒔いてきた種が、最後の最後になって実を結ぶ人たちが少なくないので、教会がもっとオープンになって「うちで葬儀ができますよ」と言ってくれたらと思います。とはいえ、聖礼典がネックになってしまうのですが。
Y:そうですね。日曜学校に来ていた人が、葬儀で教会に戻ってくるということもよくあります。データによると、教会に来ても3パーセントくらい離れています。これは、礼拝を守っている人より多いです。教会を出てしまったという後ろめたさがあって、帰りづらくなっているようです。こういう人たちが、もう一度神様の元に戻って来られるようサポートするのも教会員の大事な役割ですよね。
N:キリスト教葬儀から、家族がクリスチャンになる人も多いです。
Y:まさに伝道のチャンスだと思います。初めて教会との出会いがそこで生まれるし、法事にあたるものとして記念会を続けていきますから、福音を語り続けることができ、親族への伝道につながっていく。その可能性は大事にしたいと思います。
商業ベースに流されないための学びを
N:今、日本の墓地事情も変わってきています。家で1つの墓を作るより、安価で永代供養してくれる共同納骨堂が増えてきています。教会でも納骨堂が持っているので、そこであずかるならば、日本人は骨に対する執着が強いで、親族は教会に通い続けることになるのではないでしょうか。
Y:今は墓が建てらない状況で、たとえあっても維持する子どもがいないため、8割型が無縁墓になっています。教会共同墓地に葬ってもらうことで、教会員に覚えてもらえ、親族も教会に来てくれるというのは、日本人みんなの願いのはずです。
N:ただ、教会の間口を広げても、しっかりした学びがないとどんどん商業ベースに流れてしまう可能性もあります。
Y:そこが肝心なところで、神様に命を与えられ、命を終えるというのは、大きな共通した恩恵──コモングレイス(共通恩恵)の中で考えていくことが一番大事です。そこについては哲学の稲垣先生が詳しく話されると思います。今神学の中では、儒教の祖先崇拝の文化を持つ東北アジアの宣教を問い直すことが議論されています。そういう意味では、日本宣教もこれからだと思うので、今後も日本の宗教にしっかり向き合って、日本のキリスト教葬制文化を作っていきたいと考えています。
N:「2025年問題」をポジティブに捉え、そこに新しい宣教スタイルを当てはめていくと、いろいろな可能性が見えてくるように感じます。
今後の開講特別講演会の日程についてはこちらから。
なお、8月2日(月)に行われた第2回開講特別講演会「これからの未信者へのキリスト教葬儀について」は、フェイスブックにてアーカイブが公開されている。
8月23日(月)に開講するオンラインサロン講座の詳細・申し込みはこちらから。