Q.婚前交渉について、聖書ではどのように教えていますか。(20代・女性)
婚期が人類史上最も遅くなったとされる現代とは違って、14、15歳で婚約する聖書の時代では、婚前よりも婚外交渉に焦点があてられています。十戒の「姦淫してはならない」を婚前交渉禁止と同一視することに躊躇を覚える方もいるほどです。しかし実際、十戒の細部には未婚者への言及があります。「まだ婚約していないおとめを誘惑し、彼女と寝た場合、必ず結納金を支払って、自分の妻としなければならない」(出エジプト記22:15)。この「寝た場合」は、性交渉を意味します。
聖書における結婚外の性交渉は、死罪に値するものでした。「ある人が夫のいる女と寝ているのを見つけられたならば、その女と寝た男もその女も、二人とも死ななければならない」(申命記22:22)。旧約時代は、一夫多妻、買春の容認など、周辺国の性的習慣の影響を受けていましたが、聖書の神は、一貫して結婚外の性交渉を嘆かれ憎まれます。結婚における男女は全人格的に向き合い、排他的ともいえる深い結びつきによって、一体となります(創世記2:24)。
それは、神とイスラエル、キリストと教会との深い関係をも描写しうる結びつきなのです。性、命、生活、家族、子孫などの一切が一つとなるこの運命共同体(コリントの信徒への手紙一6:16)にとって、性的裏切りは、これら一切への破壊行為なのです。だからこそ、決して人が離してはならないとイエスは説かれたのです(マタイによる福音書19:5)。
「好きだから」「彼を失いたくなくて」「Hしたいから」といって性関係を持つことは、一時的な恋愛感情には真剣でしょう。しかし、性交渉がいのちを生み出し、病気も分かち合うような、肉体的にも、人格的にも、運命的にも「一体となる」という、生涯の絆への営みであるとの認識はうかがえません。聖書に見る性に関する厳しさは、人として祝福された生涯を心から望む、父なる神のみ思いの強さでもあるのです。
にしおか・まりこ 東京聖書学院、タルボット神学校(結婚・家族ミニストリーの修士)卒業。日本ホーリネス教団川越のぞみ教会で夫と共に牧会。結婚カウンセリング 「プリペアー/エンリッチ」の日本推進委員。ファミリー・フォーラム・ジャ パン評議員、臨床牧会研究会・結婚カウンセリング部門担当委員、3人娘の母。