米国の多くの学校ではすでに最終学期が終わっている。Zoom(ズーム)アプリでの授業にうんざりしていた多くの生徒や親、教師たちは、ようやく解放された気分でいることだろう。しかし夏休みの間、子どもたちをどう遊ばせるかについて親たちが考えている時も、教師は来(きた)る新学期に向け、リモート学習をいかに行うかを考え直す必要がある。登校を再開させる時期の見通しを立てることはいまだに容易ではないのだ。
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学校の本格的な再開時期について「今秋」という見解を出した州知事もいるが、国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が米国上院で述べたところによると、「リモート学習は来年まで継続する可能性が高い」という。米国疾病予防管理センター(CDC)は「学校再開への勧め」を出したものの、それは保護者と議会の両方から(時期尚早ではないかとの)疑念を呼んでいる。教育者で保護者でもある私も同じ気持ちだ。
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教師たちは、今からすでに指導準備を始めなくてはならない。行政や同僚に対して情報やサポートを求めることもできるが、信仰を持っている教育者であれば、イエスから知恵を借りることもできるだろう。
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確かにイエスの教えは、多くが対面で行われた。(湖で舟の上からなど)遠く離れたところにいる人々に話しかけたこともあったが、イエスは多くの人と近い距離で関係性を築いていたと福音書は語る。キリストは肉体を持った人間として宣教活動を行ったわけだが、遠く離れた人にも教えを語り、癒やしをもたらした。
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信仰を持つ教師やすべての教育者(※牧師や教会学校教師も)が学ぶべきキリスト的リモート授業テクニックを4つにまとめた。
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1 離れた場所からでも祝福を与えられる
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イエスは自らの活動について、物理的な制限に甘んじることはなかった。病気にかかった僕(しもべ)を持つ百人隊長がやって来ると、イエスは彼の信仰を通じて、「力は距離を超えて働く」ことを証明した(ルカ7:2~9)。イエスは至るところにおられ、その力は限りなく世に及んでいるが、この物語は、「私たちの必要を満たすのにイエスが必要とするのは信仰であり、イエス自身の物理的存在ではない」ことを教えてくれる。百人隊長の信仰があったからこそ、癒やし主イエスの働きは距離の制限に妨げられることはなかったのだ。
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同じように遠く離れた教師も、生徒の人生に確かな影響を与えられる。教師として働く友人も、自らが開催している「放課後の数学クラブ」の影響についてそう理解している。生徒が学校に在籍しているか否かにかかわらず、パンデミック以前から彼は放課後、多くの生徒に定期的な指導をしてきた。学校がリモート授業を実施すると決めた際にも、彼はオンラインを通して指導を続けることに決めた。
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毎晩1時間、ポップなBGMを流しながら、生徒から送られてきた数学の問題の解き方を、ホワイトボードを使ってレクチャーした。自宅待機が始まる前にもそれは可能だっただろう。しかし、自宅待機が始まったことにより、「教師としての役割は肉体的な限界を乗り越えられる」とその友人は思い知ったのだ。
ここで、教師として働く友人たちに伝えたい。あなたの働きが自宅待機によって封じられるようなことがあってはならない。イエスがなさったように、私たちも人々の生活に触れることはできるのだから。
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2 行動・目的志向の勧めを
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イエスは天に戻る前に、弟子たちには使徒として働くための訓練が必要だと分かっていた。イエスは数カ月教え、任務について具体的な指示を与えると、弟子たちを二人ずつ送り出した(マルコ6:7~13)。彼らは、その訓練と指示に基づいて人々を癒やし、悪霊を追い出した。
イエスがどのようにして弟子たちを地域社会に送り出したかに思いを馳(は)せながら、教師は生徒たちに宿題を出すよう考慮したほうがいい。その宿題の内容を実践することで、生徒たちは家庭や家族、地域社会に奉仕できるようになるのだ。
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パンデミックは私たちの行動と移動を制限したが、それはまた、支えを必要とする人々に手を差し伸べる機会も与えてくれた。
私の子ども(小学生)が学んでいる教師は、時間について教える授業の中で、みんなが互いに感染から身を守りながらスーパーに行くにはどれくらいの時間が適切かを計算する宿題を出した。
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そして、計画の実行について具体的な指示を出し、息子は自分が教わったことを生かして、私たちが買い物にかける時間をいつもより20分短縮してくれた。この宿題の持つ大きな意義は、自分の受けている授業の目的を8歳の息子でも実感できたことだ。パンデミックの最中でも、学ぶことは生活の質の向上に役立つ。その後、息子は、私たちの行動時間をすべて計るようになった(それはそれで、なかなかたいへんだが)。
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3 一人ひとりの置かれた環境について思いやりを
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イエスが町を訪れた時はいつも群衆がついて来た。人々がイエスを求めた理由は、しばしば癒やしのためだった。弟子がそのことを不快に思ったとしても、イエスは誰のことも追い返したりはしなかった。
弟子が追い払おうとした子どもたちをイエスが迎え入れたことは、ちょっとしたスキャンダルだった(マタイ19:14)。またエリコでは、二人の盲人が叫びながらついて来たが、イエスは二人に語りかけて癒やした(同9:27~31)。イエスは何度も人々の異常に気づくと、その人の欠点に惑わされることなく、ニーズを満たす思いやりを実践したのだ。
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思いやりをもって導くというイエスの示した姿勢は、教育者にとって大切なものだ。宿題を提出しないことや成績の低さにばかり着目してしまう人は多い。しかし多くの生徒は、パンデミック下にある家庭環境に苦しんでいる。教師が時間をかけて、生徒たちの生活に何が起こっているかを理解しようとすることが大事だ。
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英語を教えている友人は、他のクラスからたくさん宿題が出されていることを知り、学期末の宿題を早くから発表して、提出までの期間を12週間分長くした。生徒たちは毎週のオンライン授業での短いレッスンに加えて、学期末の宿題にも取り組む時間が与えられたのだ。また、宿題の提出日はいつも木曜日なので、生徒たちは金曜日と週末をゆっくり過ごすことができた。
彼女は最近、「その配慮の効果が見えてきた」と語ってくれた。宿題の結果は期待以上のものだったし、生徒たちはそんな彼女の姿勢を好意的に受け止めてくれた。彼女の思いやりによって、生徒と教師は力を合わせて学習を進めることができたのだ。
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4 それぞれの生活様式に合わせて教えを変える
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イエスはその地域が経験してきた歴史を理解することにより、そこの生活様式に従ってたとえや教え方を変化させ、人々が自分の姿をより明確に捉えられるようにした。イエスはしばしば、その文化の常識や習慣をたとえに盛り込みながら神の国の原則を教えた。
たとえば農業に従事する人々には、種まきや刈り取り、建築、植えつけ、収穫の物語を用いたのはそのためだ。イエスは、人々を取り巻く文化と環境がすべての学習の基礎になることを知っていた。
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授業を直接するかリモートにするかにかかわらず、文化に対応した指導を行うことは重要だ。人生の学びや経験は一人ひとり異なる。
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新型コロナ・ウイルスは、特に黒人やラテン系、先住民のコミュニティーに大きな悪影響を与えている。経済的・健康的被害を広範に受けた一部の生徒と親は、学校との接触を完全に断ったという。
「国民全員がパンデミックの影響を受けている」と言うとき、それが不均一なものであることを覚えておく必要がある。学校にはさまざまな背景を持つ子どもがいるが、誰もが同じやり方で学ぶわけではなく、そこには文化的背景や生活条件の影響がある。
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リモート指導を行う必要のあるパンデミックの状況下で、そうした状況背景を指し示すヒントを見逃してはならない。この未曽有の事態の中で、教師は生徒をサポートするため、あらゆる手段を考慮すべきだ。
先述した「数学クラブ」をしている教師は、生徒が勉強する時のBGMプレイリストを作成したのだが、そのとき親の助けを借りながら、それぞれの人種や民族、共同体、宗教の伝統に基づいた歌を揃えたという。音楽が脳に与える影響について書かれた研究もあるが、この教師は生徒たちの文化を(BGMに)取り入れたのだ。この「(聴く人の)文化に基づいたプレイリスト」の効果は立証されてはいないが、何かを「懐かしい」「気持ちいい」と思う気持ちが精神の安定や集中力を引き出せることを願っている。
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喜んでこの働きに従事するとき、教師はキリストのようにその役割を果たせるだろう。この状況を生かしてやっていこう。
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執筆:ラン・ミラー
本記事は「クリスチャニティー・トゥデイ」(米国)より翻訳、転載しました。翻訳にあたって、多少の省略をしています。