教皇フランシスコが前田万葉大司教など14人の枢機卿を新任

 

ローマ教皇フランシスコは5月20日、新たな枢機卿(すうききょう)に14人を任命すると発表した。その中に、日本人では6人目となる前田万葉(まえだ・まんよう)大阪教区大司教(69)も含まれていた。親任式は聖ペトロと聖パウロの祝日、6月29日に開かれる枢機卿会議で行われる。

前田万葉大司教(写真:カトリック大阪大司教区提供)

UCAニュース(5月21日)によると、前田大司教はインタビューに次のように答えた。「発表についてはまったく知らず、事前に連絡もありませんでした。個人的には自分が枢機卿にふさわしい人間だとは思っていないので、まだ信じられません」

前田大司教は1949年、長崎県新上五島(しんかみごとう)町、五島列島にある中通(なかどおり)島に生まれた。著書の『烏賊墨の一筋垂れて冬の弥撒──万葉神父の日々是好日』(かまくら春秋社)の著者紹介によると、「祖母方の曾祖父一家はキリスト教弾圧時代に五島列島の久賀島で迫害され、3人が殉教。祖父は、まだ偏見が強く残っていた時代にキリスト教に改宗。親や親戚、同郷の人々から猛反発を受けながらも、命がけで信仰の道を守り、その思いは子孫へと引き継がれている」。

1975年、サン・スルピス大神学院(現在の日本カトリック神学院福岡キャンパス)を卒業し、司祭に叙階。長崎教区の福江教会助任司祭から始まり、76年、浜脇教会、80年、宝亀教会、88年、俵町教会、98年、田平教会の主任司祭を務める。91〜94年、長崎教区報「よきおとずれ」編集長。2001〜06年、平戸ザビエル記念教会主任司祭、平戸地区長、長崎教区顧問。06年、カトリック中央協議会事務局長に就任、11年、広島教区司教に叙階、14年、歴代8人目の大阪教区大司教に着座した。

枢機卿に新任された14人のうち、教皇選挙権を持つ80歳未満の11人は、イラク、スペイン、ポルトガル、イタリア、ポーランド、ペルー、インド、マダガスカル、そして日本出身者と、多国・多地域にわたる。このことについて教皇は、「この地球上に神の慈しみ深い愛をあまねく説き続ける教会の普遍性を示すもの」と説明した。

枢機卿は、カトリック教会における教皇の最高顧問で、教皇に次ぐ地位にある。任命は教皇が自由に行い、任期は設けられていない。これで親任式後は、枢機卿の総数は227人、うち教皇選挙(コンクラーベ)の投票権を持つ80歳未満は125人となる。

枢機卿は緋色(カーディナルレッド)の聖職者服を身にまとう。緋色は、信仰のために進んで命をささげるという決意を表す色。また、赤色の半球型の帽子(イタリア語で「ズケット」、ラテン語で「カロッタ」)をかぶる(教皇は白、司教は赤紫、大修道院長は黒色)。

日本人の枢機卿ポストは、白柳誠一枢機卿が2009年12月に帰天してから空席だったが、9年ぶりにそれが埋まることになる。また、日本から枢機卿が任命されるのは2003年の濱尾文郎枢機卿以来、約15年ぶり。ちなみに日本の大司教は、前田大司教のほか、菊地功・東京大司教(59)と髙見三明・長崎大司教(72)がいる。

日本人の歴代枢機卿は下記のとおり。( )内は任命期間。

1、土井辰雄(60─70年)東京大司教
2、田口芳五郎(73─78年)大阪大司教
3、里脇浅次郎(79─96年)長崎大司教
4、白柳誠一(94─2009年)東京大司教
5、濱尾文郎(03─07年)教皇庁移住・移動者司牧評議会議長

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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