教皇フランシスコは待降節の始まった1日、プレゼピオの意味と価値をめぐる使徒的書簡「アドミラビレ・シニュム」(素晴らしいしるし)を発表した。プレゼピオは、多くの教会や家庭で飾られるキリスト降誕の場面を再現した模型のこと。
教皇は日本から帰国した翌週の主日、イタリア中部のグレッチョを訪れ、洞窟の祭壇でこの書簡に署名した。1223年、アッシジの聖フランシスコがこの洞窟前で降誕の場面を再現したということで、プレゼピオ発祥の地といわれる。
「プレゼピオの素晴らしいしるしは、どれほどクリスチャンに親しまれ、驚きと感嘆をいつも呼び起こしてくれるでしょう。イエス誕生の出来事を再現するのは、神の御子の受肉の神秘をシンプルに喜びをもって告げ知らせることと同じです」とこの書簡は書き出されている。
「クリスマス前の日々にプレゼピオを準備する私たち家族の美しい伝統を、この書簡を通して応援したいと思います。それは、職場や学校、病院、刑務所、町の広場などでプレゼピオを設営する習慣も同じです。
それは、まったく異なる材料を使って、『美しさ』という小さな傑作を作り出す、まさにクリエイティブな想像力の練習なのです。父親や母親が祖父母と一緒になって、豊かな霊性を具体化するこの楽しい習慣を伝えるとき、子どもは学びます」
「なぜプレゼピオは驚きと感動を与えるのでしょうか。それは第一に、神の優しさを表しているからです。宇宙万物の創造者が私たちの小ささにまで身を低くしてくださいました」
「プレゼピオのさまざまなしるしを再考したいと思います。まずそれは、暗闇と夜のしじまの中の星空を表現しています。……私たちの存在の意味についての決定的な質問に答えるために、神はその瞬間にさえ、私たちから離れられません。私は誰? どこから来たの? なぜこの時代に生まれたの? なぜ愛するの? なぜ苦しむの? なぜ死ぬの? これらの質問に答えるために神は人となられました。神の親密さは、暗闇のあるところに光をもたらし、苦しみの闇の中を通っている人を教え導きます」
そして、母マリアと父ヨセフ、幼子イエス、東方の三博士などについて思い巡らしていき、最後に次のようにこの書簡は結ばれている。
「プレゼピオの前にいると、子どもだった頃、それを設営するのを今か今かと待ちきれずにいた時代に心は喜びながら駆けていきます。こうした思い出は、私たちの信仰を伝えることで与えられる大きな賜物に気づくよう、いつも私たちを導きます。それと同時に、子どもや孫が同じ経験を共有する義務と喜びをも感じさせてくれるのです。……どこであれ、どんなものであれ、プレゼピオは神の愛を語りかけてくれます。幼子になられた神は、私たちがどんな状態にあろうとも、あらゆる人の近くにおられることを教えてくれます。……私たちを決して一人にはせず、すべてのことを私たちと分かち合いたいと思ってくださる神に『ありがとう』と祈りましょう」