暴言がエスカレートするキリル総主教 米キリスト教指導者が「戦争支持」の再考を要請

Kremlin.ru, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5840415による

複数の教派の指導者を含む100人以上の米キリスト教指導者が3月11日、ロシア正教会のトップであるキリル総主教に書簡を送り、ウクライナへの侵攻を止めるために影響力を行使してほしいと要請した。書簡には「私たちはレント(四旬節)の精神に則り、この戦争がもたらした恐ろしい人的苦痛のために、あなたが表明したこの戦争への支持について、祈りつつ再考することを求めます」と書かれている。「レリジョン・ニュース・サービス」が報じた。

手紙は、ロシアのプーチン大統領と親しい関係にあることで知られるロシア正教会のトップ、モスクワのキリル総主教に宛てられたもの。「私たちは心を痛めながら、あなたの声と深い影響力を用いて、ウクライナでの敵対行為と戦争の終結を求め、そのためにあなたの国の当局に介入してほしいと切に願っています」と書かれている。

この書簡は、現在進行中のロシアによるウクライナ侵攻に対し、キリル総主教の対応が広く批判されていることに言及したものと思われる。キエフに本拠を置くウクライナ正教会の指導者たちは、攻撃開始時の平和への呼びかけを非難し、司祭の一人はそれを「宗教政治家」の言葉であり、プーチン大統領による侵略の正当化を黙認するものだと断じている。

以来、キリル総主教の暴言はエスカレートしている。彼は声明でウクライナにおけるロシアの敵対勢力を「悪の勢力」と呼び、最近の説教では、この対立は罪と「ゲイパレード」を開催する西側諸国からの圧力に対するより大きな戦いの一部であると主張。

署名者には、全米教会協議会理事長のテレサ・ジェファーソン=スノートン司教、全米福音主義者協会会長のウォルター・キム氏、エピスコパル教会主席司教のマイケル・カリー氏、全米福音主義者協会会長のマリア・カーター氏、米国・カナダキリスト教会(ディサイプルズ教会)総主教のテレサ・ホード・オーエンス氏、米国改革派教会名誉総幹事のウェスリー・グランバーグ=マイケルソン氏、女性宗教者リーダーシップ会議会長のシスター・キャロル・ジン氏、米国カトリック慈善団体会長のシスター・ドナ・マーカム氏が名を連ねた。

グランバーグ=マイケルソン氏は、ジョージタウン大学「信仰と正義」センター長のジム・ウォリス氏とともに、この書簡の企画に協力した。

ウォリス氏は声明の中で、「ロシアのウクライナ侵攻を倫理的、宗教的、神学的に正当化することはできないし、あり得ない。産科病棟や病院、その他罪のない一般市民に爆弾が降り注ぐ時、私たちは明言すべきだ。これは不道徳な狂人の仕業であり、権力から排除されなければならないし、プーチン大統領を支持する者は殺人を公認している」と指摘。

この書簡は、ロシア政府としばしば連携してきたキリル総主教に圧力をかけようとする宗教指導者たちの努力の一つである。先週、アイルランド、スコットランド、イングランド、ウェールズのカトリック司教団は、暴力を終わらせるための手助けをキリル総主教に要請し、世界教会協議会(WCC)の代表であるルーマニア正教会のイオアン・ソーカ司祭も、同様にプーチン大統領と話すよう懇願していた。「私はWCCの事務総長代理として、また正教会の司祭として、聖下様に手紙を書いている。どうか声を上げて、苦しんでいる兄弟姉妹に代わって働きかけてほしい。そのほとんどは、私たちの正教会の忠実な信徒でもある」

キリル総主教、WCCの書簡に返答 「露骨なロシア嫌悪」「政治的偏見や一方的な見方」と反論 2022年3月14日

戦争終結のためキリル総主教にもっと働きかけてほしいという声は、ロシア正教会の内部からも上がっている。西ヨーロッパのロシア正教会大司教であるドゥブナのヨハネ大司教は3月2日、ロシア当局とともに「怪物的で無意味な戦争」に対して「声を上げる」よう公式に要請した。また、戦争をリベラルな西洋に対する「形而上学的」な戦いであるとするキリル総主教の考えに異議を唱え、「そのような福音の読み方には同意できない」と述べた。

一方、ロシア正教会の司祭数百人が最近、侵略を非難する請願書に署名し、署名者の一人はその後、ロシアの行動を批判する説教をしたことで逮捕された。また、ウクライナでは、ロシア正教会の司祭がキリル総主教を特別視し、典礼の際にキリル総主教を記念することを拒否し、教会からの分離独立を懸念する動きさえ広がっている。

他のロシア正教会の指導者たちにも圧力が強まっている。ロシア正教会の対外的な教会関係の責任者であるヒラリオン大司教は、マイク・ペンス元副大統領のようなアメリカの保守派と関係を築こうと何年も努力してきたが、ロシアの侵攻に対する沈黙が原因で今週、スイスのフリブール大学で教鞭をとる職を失ってしまった。

(翻訳協力=中山信之)

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