教皇フランシスコは、どんな人の中にも入っていく開かれた人 上智学院のプレス・セミナー

 

今月下旬に訪日する教皇フランシスコについてのプレス・セミナー(上智学院主催)が10月28日、上智大学(東京都千代田区)で開催された。ホアン・アイダル神父(同大教授)とレンゾ・デ・ルカ神父(イエズス会日本管区長)によるレクチャーと質疑応答に、大手メディアなど報道関係者35人が集まった。

二人の神父は教皇と同じアルゼンチン出身で、当時、神学院院長だった教皇から直接薫陶(くんとう)を受けた。このことから二人には多くの問い合わせがあり、その対応として今回のレクチャーが企画された。

ホアン・アイダル神父(左)とレンゾ・デ・ルカ神父

最初にレンゾ神父が、「パドレ・ホルヘから教皇フランシスコへ」と題してレクチャーを行った。教皇の本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオで、「パドレ」とは神父のこと。

「あわれみ」という言葉が教皇の特徴であり、繰り返し語る言葉としては、「平和を大切に」、「他人と関わる」、「廃棄の文化を批判する」、「インテグラル(人間に関わるあらゆることを含んでいる)なエコロジーの視点を」があるという。また、「司教時代、町を気軽に歩き、人々の中に入って説教をする姿などが強く印象に残っている」と話し、サッカー好きで、趣味はタンゴを踊ることと紹介した。

続く質疑応答では、次のようなやりとりが交わされた。

──教皇はどんな思いを持って来日されるのでしょう。

レンゾ神父:同じイエズス会のフランシスコ・ザビエルが戦国時代、日本に初めて福音を伝えたこと、また江戸時代など、キリシタン迫害の中で多くの殉教者を出したことで、ほかの国と比べても信者たちへの思いが深いと思います。

レンゾ・デ・ルカ神父

──教皇はどのような人?

アイダル神父:世の中のリーダーとはまったく違う価値観を持ち、「別のやり方で世界を変えることは可能である」ということを示し、私たちに大きな希望を与えてくれる人です。

──宗教に関心があまりない日本について。

レンゾ神父:日本だけでなく、ヨーロッパでも宗教意識は薄れており、一つの社会の現象といえます。それに対して教皇は、「霊的な価値観を無視すれば、人間そのものがおかしくなる」と述べています。

──日本の神道や仏教については?

レンゾ神父:今回の来日で教皇は、日本のほかの宗教の指導者と会うことになっています。それぞれの宗教を超えて、人を大切にする、違いではなく共通点を探して歩み寄っていく、一緒にできることを探していくということだと思います。

アイダル神父:教皇は、「日本の文化を大切にし、皆さんにも大切にしてほしい」と言っています。その文化には神道や仏教も入ると思います。

──一般の人にも身近に感じられる教皇のエピソードを。

アイダル神父:教皇の大きな魅力は、人を信じることです。いつも「ドアを開けましょう」と言い、小さい人(※)を尊敬しています。神学校時代のことですが、中国人をかくまったことがあります。これはとてもリスクがあることですが、いま助けなければならない人を助けることができる人です。

※次のイエスの言葉による。「お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。……わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(マタイ25:35~40)

ホアン・アイダル神父

──最近では何かありますか。

レンゾ神父:教皇はとても忙しいはずなのに、会う時にはいつも、自分との時間がたくさんあるかのように接してくれます。それは相手に安心を与えます。

──核兵器廃絶について。

レンゾ神父:「核兵器だけでなく、すべての武器や戦争をなくし、別の道を探す」と言われています。

アイダル神父:教皇は善を信じていて、「どんなに悪い社会でも、善い人が一人でもいれば、希望が持てる」と言います。なぜ核兵器を持つのでしょうか。それは相手が悪いと思っているからで、これを変えれば、世界は変わります。

──教皇が日本に持っているイメージは?

アイダル神父:とても素晴らしい文化を持っている反面、お金に支配された重荷を背負っているというものです。そうした社会は、他者を受け入れることを妨げます。そこをいちばん心配しているのではないでしょうか。

──深く心に残る教皇の行動や影響を受けた言葉は?

レンゾ神父:「待つのではなく、迎えに行く」という態度です。これは日本の教会にも言えることだと思っています。

アイダル神父:「あなたが難しいことを勉強しているのは、貧しい人の状況を変えるためで、そこから出発しなければいけない」と言われました。また、「小さい人たちは特別な知恵を持っているのだから、健全な人間になるため、小さい人から学びなさい」という言葉もよく覚えています。

会場には報道関係者35人が集まり、教皇来訪の関心の高さがうかがわれた。

──プロテスタントとの協力について。

レンゾ神父:第2バチカン公会議が開かれた60年代からそれは大事にされてきたことです。今の教皇はあえて強調しなくても、それは当たり前のようになっています。互いにいろいろな共通点を持っているので、これからもその関係は発展していくと思います。

アイダル神父:日本はクリスチャンが少ないので、カトリックとプロテスタントの距離は近いと思うのですが、アルゼンチンはそうではありません。ほとんどがカトリックで、私が子どもの頃は、プロテスタントはあやしい人たちでした。その人たちと近づくことを学んだのも、教皇からです。教皇は、宗教のバリアも超えて、どんな人の中にも入っていく非常に開かれた人だと思います。

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