アバコスタジオ(東京都新宿区)に、完全デジタル化した映像と音のスタジオ「FOUR TUNE」が17日にオープンする。さまざまな音楽録音とアニメ「ちびまる子ちゃん」のアフレコなども行われる老舗スタジオに、最新設備を備えた新しいスタジオが加わる。
アバコスタジオは、キリスト教視聴覚センター「アバコ(=AVACO)」の建物内にあるスタジオ。アバコはAudio(聴く)Visual(視る)Activities Commission(事業部)の頭文字をとった愛称で、1949年、視聴覚技術の発展のため、日本キリスト教協議会(NCC)の視聴覚部門として設立された。
今回誕生する「FOUR TUNE」は、編集機能と4K75インチモニターでの試写機能を備えた日本で唯一のコンセプト・スタジオ。旧304スタジオを、最新設備と高品質な音響空間のMAルームに改装し、画質を落とさずに最終試写ができ、さらにその場で映像の修正も可能なハイスペック設備となっている。また、アシスタント以外の駐在スタッフを置かないことでスタジオ料金を低く抑え、フリーのスタッフをつけることで質もアップさせるなど、コストパフォーマンスとハイクオリティーも兼ね備えている。
「クリエィティブ・フローにイノベーションを」という「FOUR TUNE」のコンセプトを考え、新しく誕生させたのは、映像ディレクターの渡部識(わたべ・さとる)さんと、CLAMP.LLC のCEOで、プロデューサー、作曲家の南慎一(みなみ・しんいち)さん。二人は以前から互いの仕事を通しての知り合いで、今回「アバコスタジオを新生させたい」というアバコ側からの希望を受け、映像と音を結びつけるMAスタジオで編集から試写までを一度にできるようにすることを提案し、実現に至った。
渡部さんは、CMプロダクション2社の演出部を経て、2003年からフリーで活躍する映像ディレクター。これまでに数々のCMを手がけ、ACC賞銅賞、ギャラクシー賞奨励賞などを受賞している。教文館社長の渡部満さんの長男でもある。アバコスタジオのプロデューサーとして今後のビジョンを次のように語った。
「アバコには、撮影スタジオや音楽とアフレコ用の録音スタジオはありますが、撮影後の映像編集、音楽編集、MA作業というポスト・プロダクションのためのスタジオはありませんでした。『FOUR TUNE』はそれらを兼ね備え、さらにクライアントに高画質のモニターを使って試写を見てもらえるようにしました。そこまで1箇所でできるスタジオは『FOUR TUNE』しかないと思います。
9月中旬からは、スタジオのホームページもスマホ対応に変わる予定で、そのディレクションも今やっています。
今後は、予算は少ないけれど映画や映像作品を作りたいと思っている人たちをバックアップできたらと思っています。普通の商業ベースではない料金で提供して、その代わりに映画のクレジットに『アバコスタジオ』と載せてもらうとか。将来的にはコンクール的なこともできたらと思っています」
南さんは、尚美学園短期大学を卒業後、音楽制作のほか、ステージ演出や映像制作も行い、2013年に CLAMP.LLC を創立。エンターテインメント全体にわたるプロデュースを手がけ、現在はグーグルなどIT企業のプロ・ユースやコンテンツ制作も行っている。
「アバコスタジオは、今回のプロジェクトを依頼される以前から仕事で何度か使っていましたが、キリスト教関連のスタジオとはまったく知りませんでした。しかし、『いいものを常に発信し、作るもので人を幸せにする』という発想があれば、こういうスタジオは尊く、エンターテインメントで人を幸せにする一端を担えるのは光栄なことです。
レコーディング・スタジオは、昔ながらの機材でも良いものは作れます。しかし映像に関しては、ハイビジョン、4K、8Kと、次々と進化していくので、やはり最新のものを使わなければいけません。ですので、音楽は老舗、映像は常に最先端の機材で、どういう仕事にも対応できるというスタンスでありたいと思っています。
今、お金をかけなくてもモノは作れる時代ですが、『ここのスタジオを使ったらいいものができるよね』という評価をいただいて、常にアバコのスタジオを使いたいと思ってもらえるようにしたい。また、僕らは作る側でもあるので、使う側としてもアンテナをきちんと立てて、皆さんのニーズに応えられるスタジオにしていきたいですね」
アバコスタジオ社長の松本登(まつもと・のぼる)さんは、「牧師のメッセージや賛美の録音、また教会のプロモーション・ビデオの制作などもしていますので、ぜひお問い合わせください」とアピールした。