春季例大祭での参拝・真榊奉納 中止求めNCC靖国委が首相に声明

日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(星出卓也委員長)は3月4日、岸田文雄首相に宛てて「首相・閣僚は靖国神社春季例大祭に参拝及び真榊奉納をしないでください」と題する声明を発出した。

同委員会は、靖国神社の春季・秋季例大祭のたびに抗議を行ってきたが、今回の声明でもあらためて「首相及び閣僚が、政府を代表する公的な肩書をもって靖国神社に参拝及び真榊を奉納することは、日本国政府と靖国神社が特別な関係にあることを宣伝するものとなり、日本国憲法第20条3項の『政教分離原則』に違反する行為」であると強調。奉納料を私費で支払ったとしても、公的な立場を背景に報道されていること自体が「公的」な性格であることを示すものだと述べた。その上で、「軍事費の拡大、専守防衛を撤回した反撃能力の解禁、米軍と一体化した自衛隊の軍事行動など戦争に向かう異常事態」を政府が作り上げているとし、新たな戦死者を生み出す準備として、首相や閣僚らが靖国神社での参拝および真榊奉納を意図的に行っているのではないかと危惧した。

声明の全文は以下の通り。


首相・閣僚は靖国神社春季例大祭に参拝及び真榊奉納をしないでください

内閣総理大臣 岸田文雄様

私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は、靖国神社の春季・秋季例大祭毎に、首相及び閣僚らが真榊奉納を行い、また参拝を続けていることに対して抗議を行って来ました。首相及び閣僚が、政府を代表する公的な肩書をもって靖国神社に参拝及び真榊を奉納することは、日本国政府と靖国神社が特別な関係にあることを宣伝するものとなり、日本国憲法第20条3項の「政教分離原則」に違反する行為です。特に戦前戦中の「国家神道体制」は学校教育などを通して全国民に一律に靖国神社の思想を教え、信じない例外を認めなかった負の歴史を残しています。政教分離原則は国民に信じない自由を認めず、靖国神社の思想を強要した歴史を念頭に置き、これを防止するために定められたものです。その国家神道の中心的存在であった靖国神社に首相及び閣僚が参拝や真榊奉納を繰り返すことは、明白な政教分離原則違反であり、憲法尊重擁護義務を踏みにじるものです。

また奉納料を私費で支払ったとしても「私的参拝」との言い訳は通用せず、公的な立場を背景に報道されていること自体が「公的」な性格であることを示すものです。

今年1月9日の陸上自衛隊幹部らの靖国神社集団参拝が報道され、大きな問題となっています。「公用車の不正使用」の理由で、防衛省内で処分も行われていますが、自衛隊幹部らが集団で靖国神社を参拝したこと自体が、日本国憲法第20条の政教分離違反であり、1974年に出された防衛省の事務次官通達違反でもあります。また首相や閣僚が自らの肩書をもって奉納行為を行うことも、同様に政教分離違反です。今年の1月の陸上自衛隊幹部らの集団参拝に留まらず、海上自衛隊を含めた全自衛隊において集団参拝が広く行われていた実態も報道されています。深刻な事態が明るみに出ている中で、首相・閣僚が依然として憲法無視の行為を続けることはさらに深刻な事態をもたらします。

現在政府は、軍事費の拡大、専守防衛を撤回した反撃能力の解禁、米軍と一体化した自衛隊の軍事行動など戦争に向かう異常事態を作り上げています。それによって、あたかも、新たな戦死者を生み出す準備として、首相や閣僚らが靖国神社での参拝及び真榊奉納を意図的に行っているのではないかと危惧しています。

首相及び閣僚は憲法の定める政教分離原則を厳格に遵守する義務を負っています。今年の靖国神社春季例大祭において参拝、真榊奉納を行わないよう強く要請します。

2024年3月4日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 星出卓也

関連記事

この記事もおすすめ