同志社大学で22年間にわたり教鞭をとった越川弘英氏(キリスト教文化センター教員)による最終講義が3月5日、同大クラーク・チャペル(京都市上京区)で行われた。会場には同氏から教えを受けた学生、卒業生らを含め100人超が集った。
越川氏は1990年、同志社大学神学研究科を修了。日本基督教団中目黒教会(1988~1992年)、巣鴨ときわ教会(1992~2002年)で牧会に従事した後、同大キリスト教文化センター所属の教授となった。
同志社大学は元来、歴史神学で有名だったが、牧会者の養成という視点から教員が少なかった実践神学における研究の蓄積が課題とされていた。越川氏はW・H・ウィリアムや、J・F・ホワイトらに代表される礼拝学や牧会学の書籍を数多く翻訳し、米国での基準とされる知見を日本に持ち込んだ。自筆の書籍を含め、越川氏が手掛けた書籍の多くは、今日の日本の実践神学の底上げに寄与したと評価されている。
当初、最終講義を予定していなかった越川氏だが、センターの活動に参加していた学生ら有志が本人に代わって企画し、実現にこぎつけた。同センターは学内でささげられる礼拝など、キリスト教の祭儀を企画・運営する役割も併せ持つ。祭儀は所属する有志の学生らが主体となり運営され、同志社大学のキリスト教主義教育を形骸化させないための要となるべく活動してきたという。その活動を長年顧問として指導したのが越川氏だった。
この日の最終講義は、キリスト教文化センター准教授の森田喜基氏が司式、奏楽を同センター専従オルガニストの加藤真子氏が担い、「礼拝式」としてささげる形式がとられた。越川氏は自身の半生と研究を振り返りつつ、「人はなぜ生きるのか」という根源的な問いと向き合うものだったと語った。それを解き明かすことのできるアプローチが、神学であり、キリスト教であり、イエスであったという。
参加した教え子の一人である小野寺美穂氏(神学部1回生)は、「越川先生が同志社で鳴らし続けた〝実践〟と〝愛〟という教えをクラーク記念館の鐘塔の音色とともに、キリスト教文化センターの先生たちと学生スタッフがしっかりと継承していきたい」と語った。