クリスマスは脱北者(北朝鮮離脱住民)への伝道活動に最適な時期だと考える人もいる。また、そう確信を持てないという人もいる。「クリスチャニティ・トゥデイ」が報じた。
毎年クリスマスになると、ルー・ギャロ氏は韓国の釜山でサンタクロースの格好をする。若い脱北者のための学校で、ギャロ氏と妻のリサさんはプレゼントを持参し、子どもたちにお菓子の家の飾り付けを教え、クリスマスの本当の意味について話す。ある年、ギャロ夫妻はページェントを企画し、天使、羊飼い、博士、家畜小屋の動物たち、身ごもった処女(おとめマリア)、乳飲み子(幼子)となった神(受肉したイエス)など、キリスト(メシア=元来油注がれたものの意、王への敬称、後に救世主イエスそのもの指す)降誕の物語を生徒たちに教えた。
しかし、北朝鮮から逃れてきた人々のほとんどは、クリスマスを知らない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の共産主義体制は、サンタクロースや降誕祭を許可していない。北朝鮮政府は2016年にクリスマスを完全に禁止し、12月24日を金正恩の祖母である金正淑を記念する日とした。
北朝鮮の人々がクリスマスを知っているとすれば、それはアメリカの祝日だと認識しているかもしれない。映画『ホーム・アローン』(1990年)のような密輸された作品を見る機会を持つ人もいた、とNK(北朝鮮)ミッションズの創設者であるギャロ夫妻は言う。バージニア州出身の夫妻は、イエスの誕生の日は、大きな喜びの福音を何も知らない人々に福音を伝える絶好の機会だと考えている。
また、彼らは幼いころからアメリカは邪悪な国だと教えられてきてしまっているので、クリスマスは北朝鮮のアメリカのへ考え方を変えるチャンスでもある。「どこにでもできる限り、アメリカ文化を彼らに伝えたいのです」とルー・ギャロ氏は言う。
だから、ギャロ氏はサンタとしてキリストについて説教する。アメリカや贈り物をする習慣について少し話し、『ジーザス・ストーリーブック・バイブル』を使って、イエスが最も偉大な贈り物であることを説明する。
しかし、韓国の他のミニストリーのリーダーや牧師たちは、1998年以来北から亡命してきたおよそ3万3000人の人々へのアウトリーチの機会としてクリスマスを使うべきだとはそれほど確信していない。ソウルにあるグローバル・ミッション・チャーチの主任牧師であるソンウン・デビッド・チェ氏は、南側に住む北朝鮮人(「入植者」とも呼ばれる)は、クリスマスの意味についての会話に引き込まれるような深い共鳴を持っていないと述べた。
実際、彼らはそれを不快なものと見るかもしれない。チェ氏によれば、韓国のクリスマスは消費主義的に見えることがあるという。また、宗教的な側面が奇怪で迷信的に見えることもある。共産主義の国では、キリスト教は「悪魔の宗教」だと教えられてきたのだ。
北朝鮮で育った大学生のス・オク・チェさん(ソンウン・デビッド・チェ氏とは無関係)は、クリスマスはプレゼントがすべてだと思っていたという。彼女はクリスチャンになって初めて、クリスマスにはもっと意味があるのだと気づいたという。
「神様を知るにつれて、その日がイエス様の誕生日だとわかったんです。だから今、クリスマスが近づくと、真っ先に頭に浮かぶのは感謝の気持ちです」と彼女は言う。彼女はそれを弟に話してみた。「だから何?」彼は言った。「それが僕に何の関係があるの?」
グローバル・ミッション・チャーチは毎年、(北朝鮮からの)入植者のためのパーティーを開催している。それはクリスマスの伝統と、より親しみのある新年のお祝いを組み合わせたものだ。同教会は現在、家族から引き離された女性や子どもを含む約100人の北朝鮮人のケアをしている。パーティーでは、南北朝鮮人が聖歌や賛美歌を歌い、タレントショーも行われる。祈りの時間と共に、家族への切望を分かち合う」ことができるイベントだと、ソンウン・デビッド・チェ氏は語った。
このような取り組みは、エゼキエル書37章17節を引用した南北統一に対する教会のビジョンの一部である。チェ氏は、その取り組みは「分断された南北の溝を私たちの手で埋めることを欲している」と語った。
オンヌリ教会の英語ミニストリーの主任牧師であるスティーブン・チャ氏によれば、クリスマスが脱北者への伝道の機会なのか障害なのかは、なんとも言えないという。状況に敏感でなければならない。
「韓国のクリスチャンがクリスマスに北朝鮮難民に伝道し、福音を伝えることの効果は、個々の脱北者のストーリーや個人的なつながりに左右されます」と彼は言う。
(翻訳協力=中山信之)