ACTアライアンス COP28の成果に落胆隠さず

世界教会協議会(WCC)やルーテル世界連盟(LWF)の加盟教会や関連団体が作る人道支援・開発支援・政策提言のための国際的な同盟である「ACTアライアンス」は12月13日、アラブ首長国連邦のドバイで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が同日に閉幕したのを受けて、その成果に「がっかりした」と低く評価する記者発表資料を公式サイトに掲載した。

以下は「エキュメニカル・ニュース・ジャパン」による日本語訳。


たぶん驚くほどのことでもないかもしれないが、12月11日に議長団が弱い草案文を公表し、それが米国や英国を含む多くの国々による軽蔑と拒絶に、そしてより力強い文言を求める市民社会の組織や宗教団体の要求にあった後に、COP28は予定の時間を超過した。

議長団は12月12日の正午までに終える決意でいたものの、その予定は叶わず、最後の全体会合は12月13日の午前11時になってやっと始まったのだった。締約国は徹夜で働き、合意に近いものを発表したが、少なくとも一つのグローバル・サウスのグループが、小槌が下される閉会前に自分たちは議論を終えていないと記録のための注を残したままだった。

ACTアライアンスはこれらの交渉を2週間以上も追い、グローバル・ストックテイク(訳者注: 気候変動に対する取り組むの世界的な進捗状況のこと)に目を配りながら、世界中からACTのメンバーが気候資金に関するあらゆる問題群、とりわけ適応策や損失・被害に関する資金調達を追跡し続けた。人権やジェンダーが交渉の中でどのように扱われるのかも、鍵となる関心事であった。

全体にわたって、COP28は気候正義に関心を持つ人たちにとって好調のスタートを切った。締約国は7億9200万ドル(約1122億円)の寄付金の約束で損失・被害基金を運用可能にすることに合意した。悲しいことに、これは気候変動の影響による巨大な課題に直面する人々を支援するのに必要な金額の1%にも満たない。

グローバル・ストックテイク

残念なことに、グローバル・ストックテイク(GST、気候変動に対する取り組みの世界的な進捗状況)の野心は地球温暖化を摂氏1.5℃以下に止めるために必要なものとは正反対である。

私たちがGSTの中で目の当たりにしているのは、人権について力の弱い文言である。ただ人権を尊重するというのだけでは十分ではない。

ACTアライアンス気候正義グループの共同議長でもある、ルーテル世界連盟のエレナ・セディロさんは次のように意見を述べている

「人権を守り促進して実現することは寄港に関する交渉の中心になければならない。COP28気候サミットの指導者たちは人権を中心に据えるべきであった。野心的な気候のための行動は、正義と公平性を優先するものである。人権なくして気候正義はない」

損失と被害

損失・被害基金を運用可能にするための合意がまさに初日になされたことは、突破口であった。

ACTの気候正義グループ共同議長でもあるLWFのエレナ・セディロさんは次のように意見を述べている。

「寄付金の約束が入ってきた一方で、気候変動に関連した損失や被害によって影響を受けた人たちを支援するために、さらにもっと多くのものが必要となっている。この基金への寄付は、共通だが差異ある責任と、汚染者負担の原則に基づくべきであり、任意に基づいて行われるべきではない」

LWFのCOP28代表であるマウア・マロさんは、次のように意見を述べている。

「COP28の成果はがっかりするものではあるけれども、青年たちは、合意された損失・被害基金の運用可能化を実施するために、より多くの野心と明確な道を強く求めることを決してあきらめないだろう。

適応策のための余裕がもうこれ以上ない社会に住んでいる青年として、経済以外の損失と被害、それもとりわけ人間によって引き起こされる移動性や立ち退き、土地や人々・文化や先住民族の知識の損失のような、気候変動によって引き起こされる無形の影響は、遅滞なく取り組まなければならない」

気候資金

ACTアライアンス気候正義で指導的立場にあるジュリアス・ムバティアさんは、次のように意見を述べている。

「またしても、気候資金はCOP28での野心のレベルを決める上で複雑な役割を果たした。COP28の資金パッケージが心配なのは明らかだ。公的で新しくしかも追加的で供与に基づいた譲与的な資金を提供するための、富裕な国々による約束は、多くの場合において見過ごされてしまった」

適応策

ドバイにおける交渉は、「適応策のための地球規模の目標」のための枠組みを採択した。それは七つのテーマに沿った分野に対する目標を提示するとともに、変動する気候の中で人々の生活と暮らしの確保の進歩を、責任をもって監視するために、利用可能な最良の科学に基づいた指標を開発する必要性を認めている。

さらにいえば、その枠組みは締約国に対し、適応策のための行動を包括的な形で構築し、地域社会や先住民族、そして障害を持つ人たちのような他の周縁化された集団を考慮し巻き込むよう強く求めている。

この決定は適応策のための行動と支援を増加させる必要性を指摘しているものの、貧しくて脆弱な国々は虚偽の安心感に陥れられるべきではない。つまり、この決定は、適応ギャップを閉じるにはほとんど不十分である以前の約束を呼び起こしては認めさせるというだけである。

ACTアライアンスのメンバーで、フィンランドのフェルムに属するニコ・フマリストさんは、次のように意見を述べている。

「この決定が先進国からの新規かつ追加的な資金を要求するものではないというのは悲しいことだ。十分な資源なしには、私たちは、最も富裕な国々の炭素の遺産の最も重い負担を背負う人々のための、開発の権利を保証することができない」

ジェンダー

ACTのCOP28代表団の一人で、ACTの加盟団体であるインドネシアのYAKKUMのジェシカ・ノヴィアさんは、次のように意見を述べている。

「気候正義はジェンダーの正義と手をつないで進むべきである。インドネシアでは、2023年に3000件を超える災害があり、圧倒的に水の気象災害であった。これらは女性や女の子たち、そして障害を持つ人たちに不均等な形で影響を及ぼす。損失と被害のための資金調達は手遅れになる前に彼女たちのところへ届けられるべきである」

緩和策

「デンマーク教会援助」に所属し、ACTの気候正義グループの共同議長でもあるマティアス・ソーデルベルグさんは、次のように意見を述べている。

「私たちは今や世界の発展のための新たな方向性を得ることとなった。化石燃料の時代が終わりつつあり、そして私たちはグリーンな未来へ向かうべきなのである。それは素晴らしいのだが、しかしこの合意は残念ながら抜け穴だらけである。どのように前進するのかはしたがって各国次第なのである。同時に、グローバル・サウスへの追加的な資金提供についての約束がなく、それはその移行が起こらないかもしれないことを意味している。次のCOPは資金に焦点を当てることになるが、それはこのグリーンな移行が可能となるのかどうかを私たちが見いだす時なのだ」

青年

世代間の正義と青年の関与を担当しているLWFプログラム青年部長のサヴァンナ・サリヴァンさんは、次のように意見を述べている

「気候変動が不均等な形で若者たちに被害をもたらすだけでなく、青年を含めた、全ての世代の創造性と知恵がなければ、正義についての私たちの話し合いは不完全なのだということを、世界とCOPは認めなければならない」

人権

ACTの加盟団体であるシリアのGOPA-DERDの副所長で、ACTのCOP28代表団の一人でもある、サラ・サッヴァさんは、次のように意見を述べている。

「気候変動は政治や経済だけの問題なのではなく、人類史上最大の、人権の問題でもある。COP28の緩和策や適応策の政策や措置を導くために、私たちが人権に基づいたアプローチを採用しなければ、気候正義は蜃気楼となってしまい、間接的に人権を侵害することになるだろう」

訳者脚注:日本にあるACTアライアンスの関連団体=ACTジャパンフォーラム https://ncc-j.org/actjapanforum/

(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)

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