日本クリスチャン・アカデミー(中村信博代表理事)は11月10日、混迷を極める中東情勢を受けて「ガザ地区および周辺地域における深刻な事態についての声明」を発表した。
声明は「際限のない武力と暴力の行使」が続く現地で犠牲となった「すべての方々に深く哀悼の意を表し」「心と身体に傷を負い、十分な治療と医療も受けられないまま、いまなお生命の危機のなかにある方々と共にありたい」と表明し、「悪化を続ける事態が国際社会の分断をさらに拡大し、差別や偏見、憎悪の渦に人々が巻き込まれてゆくことを危惧」。
「無辜(むこ)の人々の生命を奪う攻撃の即時停止」と「不当に拘束されているすべての人々が一日も早く解放され、自由を取り戻し、必要な援助と支援を受けられる」ことを要請した。
さらに、「日頃から強い関心を抱き、歴史に蓄積された偏見を脱して、理解と連帯が必要であることを自覚」してきた立場から、「この地道な活動こそが深刻な事態の回避につながり、平和の実現に役立つことを信じ、公益財団法人としての活動を続け」るとした上で、「公平公正な原則を厳守し、なによりも生命こそが尊ばれ、『剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする』祈りが実現される国際社会のために、惜しまぬ努力」の継続を日本国政府、国連関係機関に訴えた。
声明の全文は以下の通り。
ガザ地区および周辺地域における深刻な事態についての声明
私たち、公益財団法人日本クリスチャン・アカデミーは、ガザ地区および周辺地域において現在進行中の深刻な事態を深く憂慮し、下記の声明を発します。
パレスチナ自治区とイスラエルを含む中東・オリエント地域は、古代からさまざまな文明・文化を発祥し、人類に大きな影響を与え続ける宗教的思索の淵源地のひとつでもあります。この地域で多くの葛藤、軋轢、紛争、戦争、占領などが生起しつづけたことも事実です。第二次世界大戦後より一貫して、私たちは宗教者の立場から、さまざまな対立を克服し、和解へと至る道を模索し、祈り、必要な訴えを続けてまいりました。紛争を調停し、対立を和解するためには、暴力や武力、戦力による威嚇と行使ではなく、「はなしあい」が必要です。
いま、この地域では「はなしあい」どころか、際限のない武力と暴力の行使が続いています。この深刻な事態により、亡くなられたすべての方々に深く哀悼の意を表します。また、心と身体に傷を負い、十分な治療と医療も受けられないまま、いまなお生命の危機のなかにある方々と共にありたいと願っています。そして、悪化を続ける事態が国際社会の分断をさらに拡大し、差別や偏見、憎悪の渦に人々が巻き込まれてゆくことを危惧し、心から心配します。
私たちは、どのような国家、組織、権力、または勢力によるものであっても、武力行使と暴力行為を認めることはありません。無辜(むこ)の人々の生命を奪う攻撃の即時停止を強く訴えます。不当に拘束されているすべての人々が一日も早く解放され、自由を取り戻し、必要な援助と支援を受けられるよう強く要請します。
ここに至るさまざまな要因は枚挙にいとまがなく、複雑にこみ入った歴史の積み重ねがあること学ばなければなりません。私たちは日頃から強い関心を抱き、歴史に蓄積された偏見を脱して、理解と連帯が必要であることを自覚してきました。これからも、この地道な活動こそが深刻な事態の回避につながり、平和の実現に役立つことを信じ、公益財団法人としての活動を続けます。
日本国政府ならびに国連関係機関にあっては、公平公正な原則を厳守し、なによりも生命こそが尊ばれ、「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする」祈りが実現される国際社会のために、惜しまぬ努力を継続されるようにと要請します。
2023年11月10日
公益財団法人 日本クリスチャン・アカデミー