岡まさはる記念長崎平和資料館(崎山昇理事長)は10月10日、館名の由来となった牧師の故・岡正治氏(1919~94年)が生前、性暴力に及んでいたことが明らかになったことを受けて、当面の間、休館することを発表した。
同館は、朝鮮人被爆者や強制労働に従事した朝鮮人の実態調査、援護活動に尽力した岡氏の遺志を継ぎ、1995年、長崎駅近くの西坂の地に設立。日本福音ルーテル長崎教会牧師だった同氏は、長崎市議会議員を3期務めた。
同館は、理事会の中には2020年の時点で情報を得ていた者がいたにもかかわらず、対応が遅れたことを謝罪。その背景に、「権威ある男性を疑わず被害者の証言を重大に捉えなかった、自分たちの内面化された性差別意識やジェンダーバイアスがあった」とし、館名の変更や展示の見直しを含む対応を行うことを明らかにした上で、「社会正義や人権を重んじる社会運動の中にも根強く存在する性差別に対して、常に自覚的であり、そして改善のために発言・発信・行動をしていく資料館であるように変わっていきたい」と表明している。
当時20代だった女性は1994年、市政担当の記者として岡氏を取材中、岡氏宅で催された懇談会後に、下着姿の岡氏に羽交い締めにされるなどの性被害にあった。同館の謝罪を受けて、「取材現場の性暴力問題や著名人による性加害、二次加害問題が溢れる日本社会が変わるきっかけになって欲しい」「私に起きた性被害は、加害者の属人的問題だけでなく、女性蔑視、性搾取がやめられない報道現場や日本社会の構造的な問題……。日本に暮らす誰もがこの構造の一部であり、自身も地続きであることに気づいて欲しい」とコメントしている。