Q.「当教会はエホバの証人、統一協会、モルモン教とは一切関係ありません」というコピーに違和感を覚えるのですが……。(30代・女性)
私もかつて牧会していた教会の案内文に、同じ言葉を使っていました。しかしある時からその言葉を止めて、「……でお悩みの方は、私たちの教会にご相談ください」という文章に変更しました。
そのきっかけとなったのは、市内にトラクト配布をしていた時、郵便受けに「セールスと宗教はお断り」という言葉のステッカーを見たことです。このステッカーに問答無用の拒否的態度、話も聞かず頭から否定する態度のようなものを感じたことで、自分も同じことを他の人にしていると気付いたからです。
「一切関係ありません」という言葉は、防衛反応の言葉であり、一切の関わりをも否定する強い拒否的態度です。そうすることで、どこか自分の正統性を表しているように感じます。この言葉には、相手の誤りを正してあげたいとか、悔い改めに導く機会を自ら拒否し、「彼らのために私たちも迷惑しています」とのメッセージを伝えようとしているかのようです。
ご存じのように私たちの国には、「宗教の目指すところはみな同じ」とか「宗教が対立するのは見苦しい」という価値観が広く浸透しています。ですから信じるか否かは別として、宗教は良いことを教えるのだから、仲良くしてほしいとの願望があります。それはクリスチャンの心情の奥深いところにもあって、質問者のあなたが感じる「違和感」は、そこから生まれるのだと思います。
エホバの証人や統一協会やモルモン教の方たちへの伝道が、簡単ではないことは承知しています。話は平行線になることが多く、話の後で虚無感さえ残ります。この方たちの熱心な伝道により、一般の方がキリスト教に対して警戒と誤解をされているのも事実です。
それでも何かきっかけがあれば、この方たちが私たちの教会に心を開かれることも十分あります。このためにも、門前払いの「一切関係ありません」は、止めた方が賢明だと私も思います。
かつもと·まさみ 1950年熊本県生まれ。聖契神学校卒業後、立正大学仏教学部(日蓮宗)を卒業。あわせて僧階課程を修了。その後、仏教大学で仏教学(浄土宗)を専攻。神道や民俗宗教の学びの必要を覚えて、神道宗教学会に加入。郷里熊本で牧会の後、1990年から千葉県流山市で開拓伝道を開始した。後に日本聖契キリスト教団に加入し、聖契神学校講師(比較宗教·日本教会史)を担当。著書に『日本人の生活習慣とキリスト教』『日本の宗教行事にどう対応するか』(いずれもいのちのことば社)など。