日本キリスト教婦人矯風会(代表幹事=飯田瑞穂、鏡清美)は8月30日、「東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染水の海洋投棄に断固反対し、中止を求める要望書」を発出した。
8月24日に岸田政権下で東京電力が「放射能汚染水」を「海洋投棄」したことについて、「本来、原子力発電所は放射性物質を周辺に出さないことを安全確保の大原則とし、国民に理解を求めてきたはず」だとし、陸上での保管方法を公の場で検討せず、反対する漁業関係者の理解を得ることなく海洋投棄を行ったことを無責任だと非難。海洋放出は30年程度との試算があるが、「廃炉の難関である原発内のデブリを取り出さない限り、冷却水の注水で汚染水が発生し続けるので、終わりなき海洋投棄になることが懸念されます」と訴えた。
また、汚染水は「多核種除去設備」(ALPS)で処理してもトリチウムは除去できず、細胞内に長く留まり、内部被曝をおこし、DNAを破壊することが指摘されていることや、トリチウム以外の放射性核種が残留していることが報道されていることなどを示し、「それらが継続的かつ長期的に生態環境に入り込めば、食物連鎖によって放射性物質は濃縮するため、どんなに希釈しても安全ではありえません」と主張した。
要望書の全文は以下の通り。
内閣総理大臣 岸田 文雄様
経済産業大臣 西村康稔様
東京電力ホールディングス 代表執行役社長 小早川智明様
東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染水の海洋投棄に断固反対し、中止を求める要望書
日本キリスト教婦人矯風会は、平和憲法の理念に立ち、平和と核廃絶を訴え、女性と子どもが安心して生きられる社会の実現を目指して活動している団体です。
8月24日、岸田政権下で東京電力は東京電力福島第一原発の事故によって発生した放射能汚染
水を海洋投棄しました。本来、原子力発電所は放射性物質を周辺に出さないことを安全確保の大原則とし、国民に理解を求めてきたはずです。福島第一原子力発電所では、溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やす冷却水が増え続け、現在、原発構内に約134万トンの汚染水がタンク約千基に保管されています。政府と東京電力は、陸上での長期保管が可能な大型タンク貯留やモルタル固化処分を公の場で一切検討せず、タンクの保管の限界を容易に回避するため、反対する漁業関係者の理解を得ることなく無責任な海洋投棄を行いました。東京電力の試算では「海洋放出」は30年程度とのことですが、廃炉の難関である原発内のデブリを取り出さない限り、冷却水の注水で汚染水が発生し続けるので、終わりなき海洋投棄になることが懸念されます。
汚染水は、「多核種除去設備」(ALPS)で処理されますが、トリチウムは除去できません。政府と東京電力は、トリチウムは体内に長く蓄積されないと危険性を認めませんが、実際は水素の同位体であるため細胞内に長く留まり、内部被曝をおこし、DNAを破壊することが指摘されています。2018年8月、共同通信は、東京電力の公開データを確認して「ALPS処理水」内にトリチウム以外の放射性核種が残留していることを報道しました。タンクに貯められている処理水の約7割に排出基準を超えた放射性核種が含まれていることも判明しています。政府と東京電力は、ALPS処理水を二次処理し、大量の海水を混ぜて濃度を薄め海洋に放出するのだから問題ないと説明しますが、それらが継続的かつ長期的に生態環境に入り込めば、食物連鎖によって放射性物質は濃縮するため、どんなに希釈しても安全ではありえません。
海は、地球に住むみんなの共有財産です。未来世代に負の遺産を残さぬよう、これ以上、海の汚染を広げてはなりません。特に、漁業関係者、地元住民の切実な訴えを聞き、東アジア、太平洋諸島に住む人々の不安な声に耳を傾けてください。事故当事国として海洋投棄に代わる陸上での保管の方法を探ってください。
私たちは放射能汚染水の海洋投棄に断固反対し、その中止を求めます。
公益財団法人 日本キリスト教婦人矯風会