私は現在、愛媛県新居浜市の新居浜教会で仕えているが、この町には別子銅山があり、純度の高い銅が採掘され、銅の産出量は世界屈指を誇り、住友グループ企業の発祥の地である。この町で伝道するには地域の人々との共通認識が大切であると思い、銅と関連づけて何かできないか? と考えた。
ある日、チャンスが訪れた! それは新居浜市の観光施設の一つであるマイントピア別子の入り口付近に「銅婚の里」と書かれた記念碑を見つけ、「これだ!」と閃いた。さっそく、私は市役所に問い合わせた。「『銅婚の里』と書かれた記念碑を見たのですが、新居浜市では何か銅婚式に関する伝統的な行事などがあるのでしょうか?」答えは「No」だった。そこで間髪入れずに申し出た。「それでは私が『銅婚の里』にふさわしいイベントを考えますから、良かったらそれを町おこしの企画として使ってください!」
こうして考えたのが「銅の町で銅婚式イベント&ツアー」の企画だ。内容は銅の町で銅婚式を挙げて、結婚7年目を祝い、夫婦の絆、家族の絆を深め、新居浜市の銅に関連する施設を観光し、銅婚にちなんだグルメやワークショップなどを楽しむという体験型の銅婚式だ。この企画を書き上げ、新居浜市に速攻でファクスした。するとなんと、この企画を新居浜市はたいへん気に入ってくださり「新居浜市の地域活性化事業として採用します!」という返信をいただいた。
こうして新居浜市のホームページに「銅婚式イベント&ツアー」が載り、2016年より毎年、町の恒例行事として行われるようになり、全国から結婚7年目の夫婦、家族が大勢訪れるようになった。「この企画がなければ新居浜市という町は知らなかったし、来ることもなかった。銅婚式の企画で夫婦の絆も深まり、この町の魅力に触れることができて良かった」と言ってくださる人も多い。中には新居浜市を気に入って移住される方まで現れ、新居浜市からたいへん感謝された。
さらに驚いたことにジブリの動画家である近藤勝也氏(新居浜市出身)も賛同し、銅婚式のイメージ画を描きおろして下さったのだ!まさか世界的に有名なジブリの動画家まで動いてくれるとは夢にも思わなかった。神様のなさることは本当に予想外だ。
また銅婚式をすることで結婚7年目の夫婦、家族へのフォローアップにもなる。結婚7年目といえば、お子さんがいる場合は、まだ小さいので手がかかり、夫婦の年齢も比較的若い。この世代をフォローアップし、大切にすることは日本の未来にとっても、教会においても重要なことではないだろうか。このように牧師が地域の町おこしに関わることで「地域の牧師さん」として親しまれるので、結果的に教会の活性化にもつながると思う。
「銅の町で銅婚式!」結婚7年目の方もそうでない方も銅婚式の聖地(!?)である新居浜市に遊びにきてくださいね!
ひろせ・かおり 1974年東京生まれ。横浜女子短期大学、東京聖書学校卒業後、日本基督教団秋鹿教会を経て、日本基督教団新居浜教会主任牧師。牧師をしながらShepherd大学大学院で学び、修士号取得。現在も牧師をしながら早稲田大学に在学中。国際ソロプチミストルビー賞受賞。趣味:猫と遊ぶ。水族館や動物園に行く。