「牧師館」は法律上どんな位置づけ? 櫻井圀郎 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.教会で役員をやっている者ですが、教会の牧師館についてお尋ねします。「牧師館」というのは、法律上および教会実践上、どういう位置づけにあるのでしょうか。企業の社宅・従業員宿舎や企業で借り上げたマンションと同じなのでしょうか、違うのでしょうか?(60代・教会役員)

宗教法人法では、宗教活動に必要な宗教法人に固有の建物を「境内建物」と呼び、本殿、本堂、会堂、社務所、庫裡、教職舍、教団事務所などを例示しています(3条1号)。教会の牧師館や司祭館は教職舍に当たり、教会の固有の宗教施設ということになります。税制上も特別の扱いを受けています。

歴史のある仏教寺院の場合は「庫裡」と呼ばれ、住職の居住だけではなく、寺院の事務、応接、接待、相談、会議などの場所としても用いられてきました。歴史のある教会の牧師館・司祭館も同様でしょう。近年では、牧師家族の専用住宅という意味で用いられているところもあります。

牧師の専用住宅という意味なら、企業の社宅や従業員宿舎と同じで、それが賃貸なら企業の借り上げマンションと同じでしょう。牧師である個人の専用区画なので、個人的な親戚や知人友人の訪問・宿泊、個人的な用務の来訪者の受け入れはともかく、教会の用務のために用いられることはなく、教会的・牧会的な意味はありません。

牧会という牧師の仕事は朝9時から午後5時までという時間で区切れるものではなく、24時間の仕事であるとすれば、牧師館は居住施設ではなく、牧会のための施設であり、宗教活動の拠点ということになります。個人の居住施設を無償または低額で使用しているとその利益分は牧師の給料に加算されて課税されることになりますが、牧会施設であれば非課税になります。

牧師館の位置づけや利用方法は、具体的には教会ごとの取り決めになりますが、単なる牧師家族の居住施設や厚生施設という位置づけではなく、牧師という職務の特殊性を顧慮して、教会の働きという点から考える必要があるでしょう。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

 さくらい・くにお 1947年、三重県生まれ。名古屋大学法学部卒業、同大学院博士課程(民法専攻)、東京基督神学校、米フラー神学大学大学院神学高等研究院(組織神学専攻)、高野山大学大学院(密教学専攻)を修了。日本長老教会神学教師、東京基督教大学特任教授。著書に『日本宣教と天皇制』『異教世界のキリスト教』(いずれもいのちのことば社)、『教会と宗教法人の法律』(キリスト新聞社)ほか多数。

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