日本キリスト改革派中部中会「世と教会に関する」委員会が主催する2・11信教の自由セミナーが2月11日、日本キリスト改革派那加教会(岐阜県各務原市)で行われ、会場からオンラインで配信された。
「日本の教会の説教と天皇––教会の歴史を振り返って」と題して講演した山口陽一氏(東京基督教大学学長)はまず、2009年7月に開催された「日本プロテスタント宣教150周年記念大会」の加藤常昭氏(日本基督教団隠退牧師)による講演「神の言葉に生かされるキリストのからだ・教会」に言及。加藤氏の「戦時中の教会は無様だった。それでも神の言葉を語り続けた牧師がいたことを忘れないでほしい」「日本の教会が最も悔い改めなければならないことは、キリストのからだである教会を勝手に使ってきたことである」「キリストの教会をキリストにお返しください」という言葉を回想した。とりわけ、後に加藤氏が「神の言葉を語り続けた牧師」として戦時中に監視下のもと説教をし続けた矢内原忠雄氏と、戦後のキリスト教ブームに流されず堅実に説教をし続けた竹森満佐一氏に影響を受けたと記していることに注目し、どの時代にあっても説教が神の言葉に堅く立ち続ける必要性を訴えた。
また改革派教会での集会にちなみ、鈴木伝助氏(日本基督教団金沢教会他元牧師)を紹介。鈴木氏は改革派信仰を明確に打ち出していた牧師であり、戦時中の国家による教会への弾圧を経験した人物であり、「聖書による戦闘の教会」という価値観を大切にしていた。これは戦争を肯定する意味ではなくヨハネ黙示録とマタイ福音書「平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ」(10章34節)を根拠にキリスト教のヒューマニズム化を忌避し、聖書を絶対的な権威とすることを強調した。
さらに、2月11日が「建国記念の日」とされた中心となる天皇制についても言及し、現在の日本では天皇の位置づけは「象徴」とされているが、実際には国民のためへの祈祷や皇居の宮殿の奥にある宮中三殿と新嘗祭を行う神嘉殿などの存在から、明らかに「祭司」的な役割を自覚的に担っていると考えられると述べた。象徴天皇は、民主主義国家における日本では主権者ではない。ゆえに祭司的役割を担う「現人神」としての現在の天皇制については積極的な民衆レベルの議論が必要であると述べた。
戦中の説教者たちは文字通り預言者的な役割を担い、聖書の言葉を社会状況に従って妥協的に解釈・説教することを許さなかった。その心構えは今日、すべての説教者も備える必要がある。また天皇制についても「象徴」という言葉をただ受容するのではなく、その本質を見抜く洞察力が必要であり、主権者である国民一人ひとりが積極的に議論すべきテーマであるとも語った。