「私たちだって〝いいふうふ〟になりたい展in東京2022実行委員会」主催のトークイベント「宗教と婚姻のあり方――神道・仏教・キリスト教の視点から」が11月25日、都内のイベントスペース「ジャスマック青山」(東京都港区南青山)で開催された(「Marriage For All Japan―結婚の自由をすべての人に」後援、Choose Life Project協力)。LGBTQや同性婚、婚姻のあり方について宗教はどのように考え、向きあっているのか、性的マイノリティ当事者を含む3人の宗教者が登壇して意見を交わした。
ゲストとして招かれたのは、中村吉基(日本基督教団代々木上原教会牧師、宗教とLGBTネットワーク代表)=写真下、千田明寛(天台宗最明寺副住職)、楽丸こぼね(神道LGBTQ+連絡会発起人)の3氏。司会は、すべての人が個人として尊重され、平等に婚姻の自由を選択できるビジョンを目指す「Marriage For All Japan」の時枝穂氏が務めた。
冒頭、宗教者であるゲストから「それぞれの宗教から婚姻についてどう考えているのか」について応答がなされた。千田氏は仏教の視点から「仏教において婚姻とは、結婚関係を通じていかに自分の信仰を深化させられるか、持続させられることができるのかが問われる。大切なパートナーに出会えたという奇跡の連続、それはやはり仏様の優しさや導きの中にあると考えることが多い」、楽丸氏は神道の視点から「婚姻とは何か明確化されていない」と前置きした上で「各々が深く結びつきを形成したいと願う手段の一つ」として考えられるのではないかと述べた。中村氏はキリスト教の視点から「結婚したいと思う人を教会の中で祝福するのは本来のあり方」と述べ、「とはいえ旧約聖書で記された神は男と女を創造したという言葉を固く信じ続けている人もいる。それは執筆時代の認識の限界であり、聖書は時代の文脈で読み直す必要がある」と指摘した。
「LGBTQとしてカミングアウトする人が増え、多様な性のあり方、婚姻が考えられる中で宗教内でのとらえ方は変わってきたのか」との問いに中村氏は、「よく自分の近くに当事者はいないという声を聞くが、どうして分かるのですかと尋ねたい。またキリスト教の立場は誰であっても祝福するのが本来の在り方であり、それは男女や同性、どのような立場も超えたものである」と応じた。そして、近代以降の日本とキリスト教の関係について以下のような言及もなされた。
「日本にキリスト教徒は多くないが先にキリスト教価値観、西洋的ロールモデルが明治以降に社会で浸透した。その結果廃娼運動、禁酒、禁煙などと相まって婚姻や男女の在り方も文化的に価値観として広がった印象を持っている」
「仏教や神道では同性愛をどう考えているか」との問いに千田氏は、仏教が男女の成り立ちに言及していないことから「仏教で同性愛はOK」と述べ、釈迦が仏教を生み出した時に「生きとし生ける者がすべて幸せになってほしい」と言及したことに注目し、「むしろ仏教だからこそ同性婚やLGBTQを支援することができる」と自身の思いを語った。
その上で「仏教にはみんな違ってみんないいという、それを誰も否定する権利はないという教えが根本にあると思う。そのような観点から仏教は同性愛も同性婚も受け入れる宗教だと思う」と述べた。楽丸氏は神道が「さまざまな時代の、さまざまな人の信仰の集積を神道と呼ぶため、明確な教義というものがない」ことからLGBTQを否定する教えがそもそもないとした一方、神道政治連盟が反LGBTQ及び夫婦同姓を支持する運動を展開していることから「誤解を招いている」との懸念も示した。実際に過去、新聞社を通じて神道政治連盟に「宗教的、信仰的根拠を持ってLGBTQに反対しているのか」と質問したところ、「神道には性的マイノリティーを否定する根拠はない」という回答が寄せられた例を挙げ、「彼らも神道的根拠や、教義や信仰から言っているのではなく、単に彼らの都合にすぎない」と述べた。
最後に、これまでの議論を踏まえ「宗教ができること」について発言。中村氏は「何か偉い教説でその人を変えるとか変わるのを待つのではなく、宗教者は伴走する存在だと思う。その人をその人として寄り添っていく。教会は教会だけで満足するのではなく、地域の問題は私たちの問題、日本の問題、世界の問題であると認識する必要があると考えている」、楽丸氏は「今、神社界ではトップが反LGBTQなので周りが声を上げることが、どんどん難しくなっている。匿名でもいいので、一緒に小さな声を、少しずつ大きな声にしていきたい」、千田氏は「仏教の中では、教義の違いや反対から性的少数者に対する反対は他宗教と比べても少ない。日本には檀家制度があり、コンビニよりも多くのお寺がある。つまり全国のお寺が同性婚やLGBTQをサポートする活動や声を上げれば、仏教国である日本全体でLGBTQに対する土壌が作れるのではと思っている」とそれぞれ語った。