気候めぐる交渉続く一方 若者たちは「過激なほど我慢ならない」 WCC青年プログラム担当幹事

写真=Paul Jeffrey/WCC

「過激なほど我慢ならない」――これが、教会を含め、多くの世界の指導者たちや、権力や影響力を持つ人たちが、気候緊急事態の問題について、いま行動していないことを批判している若者たちの間に、背景の違いや世界の地域を超えて共通している感情である。世界教会協議会(WCC)青年プログラム担当幹事のジョイ・エヴァ・ボホールさんが11月10日にWCCの公式ブログでそう記した。以下は「エキュメニカル・ニュース・ジャパン」によるその日本語訳である。


子どもたちと若者たち――預言者たち――は、ソーシャルメディアを含む、自らの土台となる環境やネットワークを用いて、権力を持つ人たちに向けて真実を語ってきています。

しばらく前に、私は友人と彼女の10歳になる息子の会話を聴いていました。私の友人は彼女の息子に話の終わりで「覚えておきなさい。あなたは私たちの未来の希望だということを」と言いました。困惑し落ち着かないようすで、彼女の息子は答えました。「ママ、私が未来の希望なんかじゃないんだって何回言えば済むの。なんで僕にそんなにたくさん圧力をかけるの?」私の友人は驚いて私のほうを見ては、その時私たちは両方ともどう応えたらよいのかわかりませんでした。

ますます多くの子どもたちや十代の人たちが不安を体験しています―そしていま、より共通した現象がエコ不安です。アメリカ心理学会はエコ不安が「環境の悪夢についての慢性的な恐怖」であると述べています。(*1)

英国・米国・ブラジル・インドやフィリピンを含む、10カ国にいる16歳から25歳の1万人の10代や若い成人における、気候についての不安に関する2021年の地球規模のオンライン調査によると、「子どもたちは多くの場合、親たちが思うよりもっと無限に多く知らされている」とのことです。

この調査に答えた若者たちの約60%は、気候変動について「とても」あるいは「極めて」心配だと感じていると述べました。75%は「未来が恐ろしい」と述べ、56%は「人類は破滅する運命にある」と信じており、そして39%は子どもたちを持つのをためらっていました。回答者の58%は、政府が自分たちか未来の世代を裏切っていると感じていました。

将来に対する不安は気候変動の問題に限ったことではなく、それはジェンダー正義―とりわけ女性たちや少女たちに対する、増大するヘイトスピーチやヘイト犯罪のような問題と相交わっているのです。それはとりわけ人種や体系的な不正義、軍事化、戦争、そして紛争に影響を及ぼすのです。

気候緊急事態に対してさまざまな部門がいま行動しておらず受け身的な対応をしていることに、若者たちは過激なほど我慢ならないものの、そこにはそれでもこれらのただ中に希望があり、そして若者たちはそれを擁護しているのです。

世界教会協議会(WCC)の交わりの中やそれを超えたところで、若者たちは力強い運動の最前線にいます。「気候YES(気候ユース・エキュメニカル・サービス)は、英国のグラスゴーでCOP26に出席していた若者たちの力強いビジョンから生まれたものです。

メンバーたちは世界のさまざまな地域の出身で、気候活動家たちなのです。もう一つのグループである「ヤング環境グループは、今年ドイツのカールスルーエで開かれたWCCエキュメニカル青年集会で始まりました。若い気候活動家たちのグループが集まって、気候緊急事態との関連で、総会に対する若者たちのメッセージを戦略化しました。

若者たちはすでにいくつかの歩みを先に進めています。気候YESやヤング環境グループのようなエキュメニカル運動は、「すべて(の被造物と宇宙)の豊かな命(ヨハネによる福音書10章10節b)」のための、神の民に対する神の招きに向けて、先を見越して行動し本当の変革に責務を負うよう教会と社会をかき立てる必要から湧き出てきました。

ドイツのカールスルーエで最近閉幕したWCC第11回総会で、若者たちは気候に関する抗議の火付け役となり、気候変動に対する緊急行動の呼びかけである、「有言実行」を意図的かつ先を見越してするよう、意思決定者たちに要求しました。

400人を超える若者たちがこの総会で次のような気候危機についての自らの嘆きのいくつかについて、はっきりと語りました。

「・私たちは、利潤と人間の消費のための、海洋を含む、母なる自然の劣化と破壊を、そして声を上げる環境活動家たちの迫害を嘆きます

・私たちは、自らのキリスト教共同体の中における、気候危機の問題を利潤のための手段と化すグリーンウォッシングの影響を嘆きます。(訳者注=グリーンウォッシュとは、『うわべだけ環境保護に熱心にみせること。〝『グリーン(=環境に配慮した)』と『ホワイトウォッシング(=ごまかす、うわべを取り繕う)』を合わせた造語で、主に企業の広告や企業活動などに対して使われる〟(SDGs SCRUM、「SDGs用語集」より: https://sdgs-scrum.jp/glossary/green-wash/

・私たちは、新たな『グリーン技術』のために、サーミ族やマサイ族のような先住民族の先祖代々の領域から土地を収奪するグリーン植民地主義の利用を嘆きます」(*2)

メッセージは明確です。若者たちは、最悪のものに向けて速く変化しつつある気候条件に対する、これらのさまざまな部門の遅い対応について、過激なほど我慢ならないのです。

WCC第11回総会での若者たちのもう一つの明確な「求め」は、その意思決定機関における若者たちの平等で公平な代表権です。若者たちが会議のテーブルで席に着くことなしに、この交わりが現在と未来について語るなんてありえません。

教会そして交わりとして、私たちはこの若者たちに対する自らのかかわりについて深く考えなければなりません。私たちはよく、若者たちに寄り添って、彼らが語り私たちに彼らの関心をもたらすための土台となる環境を提供すると言います。しかしながら、もしその寄り添いが意思決定の空間かまたは共同のリーダーシップと同じでなければ、そしてその土台となる環境が意思決定のテーブルでなければ、どうやって教会は若者たちや彼らがもたらす賜物について、意図的に自らを包括的にするというのでしょうか?

神の創られた世界を神から委託された良き管理者となるようにという招きはすべての世代が担うべきものです――すべてのものにとって公正で持続可能な未来に向けて。これはより若い世代の責任であるだけでなく、より年配やその他の世代の説明責任についての確信なのです。

若者たちはもはや待っていられません。今こそ教会が今日の気候危機の中で若者たちと関わって自らの預言者的な声を新たにすべき時なのです。そして、同時に、教会とその交わりの意思決定の場における共同のリーダーシップと責任の型を若者たちと一緒に深く考えてください。

*1 英国のバス大学の心理療法士であるキャロライン・ヒックマン(Caroline Hickman, a psychotherapist at the University of Bath in the UK). https://www.bbc.com/future/article/20220315-how-eco-anxiety-affects-childrens-minds

*2 WCC第11回総会におけるエキュメニカル青年集会からのメッセージ(Message from the Ecumenical Youth Gathering at the WCC 11th Assembly): https://www.oikoumene.org/resources/documents/message-from-the-ecumenical-youth-gathering-at-the-wcc-11th-assembly

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