『キリスト教年鑑』が統一協会の情報掲載を取りやめる判断を下した1989年に先駆けて、カトリック司教団は85年の段階ですでに「キリスト教ではない」との公式見解を表明していた。同年末には統一協会側が声明の「撤回」を要求している。なお、この段階ではまだ一貫して「統一協会」と表記する前の段階だったことを考慮し、当時の原文通り「統一教会」の表記を使用している。
昨年十月九日、日本カトリック司教団(代表・白柳誠一大司教)が世界基督教統一神霊協会(統一教会、久保木修己会長)にあてた回答に対し、統一教会側は十二月十日、力トリック司教団に送った「返書」の中で、再度、「統一教会はキリスト教ではない」などと言明した司教団「声明」の撤回を要求した。しかし、カトリック教会側は「声明」の趣旨が統一教会にあてたものであることを指摘するとともに、「声明」の撤回要求には応じられないという姿勢だ。
統一教会側の「返書」は、カトリック教会との対話の道が開かれていることを「歓迎」すると共に統一教会の〝真意〟ヘの誤解などに遺憾の意を表明している。
「返書」の中には、次のような主張が盛られている。
「当教会は、いわゆる〝自己の教派以外はすべて地獄行き〟であり、それゆえ、自己の教派以外はすべて一律に布教の対象、と見るような考えを持っていない。当教会の救済観は、キリストにある他教派はもちろんのこと、キリスト教以外の諸宗教にも神の恵みが及ぶと言う考えを持っている。このような考えは、第二バチカン公会議の教えに基づく貴司教団の考えに近いといえる」
「貴司教団が当教会をキリスト教と認め得ないがゆえに、当教会を工キュメニズムの对象とも考えない――同『回答』4項――ということも遺憾であるが、当教会の教理が、カトリック教会の教理に相反するのでいかなる運動や会合にも関与しないようにという貴司教団の考え方は、まことに理解に苦しまざるを得ない」
「当教会は、前回の『抗議文』の中にも明記した如く、貴司教団と争うことは始めから願ってはいない。それとは、まさに反対であって、いかにキリストにある諸教会と連帯して、緊急な神の救済の歴史的現場に奉仕するかが、常に当教会の関心事なのである。そういう意味では〝何がキリスト教か〟を論じることも大いに意味あることであるが、それ以上に〝何が神の御旨であるか〟を論ずることの方が、一層意味あるように思われる。」
カトリック司教団「統一教会はキリスト教ではない」 協力の誘いに警告 〝政治〟でなく〝教理〟で判断 【再録】1985年11月2日
不明 – La Semana N° 298, Argentine magazine (15 July 1982), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4874457による