スピリチュアルブームと教会の霊性は関係ある? 平岡正幸 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.最近スピリチュアルブームという言葉をよく耳にします。教会では霊性という言葉がありますが、教会の伝道にとってこのブームは有益なのでしょうか。もしそうでなければその問題点を教えてください。(20代・女性)

細木数子、江原啓之という人たちがマスコミでもてはやされていることも、ブームを呼び起こしている要因になっています。インターネットを開いてみると、神秘的なエネルギーがあるという石や食品や装飾具などの広告がたくさんあります。

このブームの源をたどってゆけば、1980年代に始まる「占いの館」に端を発することになっています。それ以前から、姓名判断や血液型占いなどはありました。

そして、そのオカルトブームがオウム事件で一時中断し、バブル崩壊後の社会的背景とも結びついて、現在のスピリチュアルブームになっています。ホスピスなどの分野でのスピリチュアリティーとはだいぶ違うものです。

全体のブームの傾向は非宗教の方向で広がっています。スピリチュアルという言葉は広く用いられておりますので、ここで言っているのは、オカルトから変遷した社会的ブームとしてのスピリチュアルを取り上げています。

スピリチュアルだから教会の霊性と何らかの関係があって伝道にプラスになるのではないかと考えたくなるかもしれません。しかし本質的な違いは、ブームでは、人間の内なる力、エネルギーを未知なる力によって引き出すことにあります。その未知なる力があるという石や食品や装飾具をインターネットなどで売っているのです。

教会は人間の内なる力を引き出すという方向とは違います。救いにおいてまったくの無力を知ること、そこに神の力が働くことを私たちは信じています。「ところが主は、『私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ』と言われました。だから、キリストの力が私に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」(コリントの信徒への手紙二12章9節)。

人間観がブームと教会では違うことに注意が必要です。私たちは、この違いを認識しつつ、正しい信仰に立つ人間観を指し示してゆくことこそ大切なことなのです。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

ひらおか・まさゆき 1950年、福岡県生まれ。日本ルーテル神学大学神学部(現ルーテル学院大学)、日本ルーテル神学校卒業。83年より日本福音ルーテル教会牧師。85年から統一協会、94年にはオウム真理教信者の脱会支援に着手するなど、長くカルト問題に取り組み、カウンセリング活動を続けた。共著書に『マインドコントロールからの解放』(三一書房)、『啓示と宗教』(サンパウロ)など。2009年、58歳で逝去。

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