忍び寄る「新使徒運動」の恐怖!?(1) 川島堅二 【宗教リテラシー向上委員会】

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長く続いたコロナ禍も日本ではようやく終息の兆しが見えてきた。こうした状況下、いわゆるカルト宗教の動向について問い合わせを時々受けるのだが、正直答えに窮している。

在住の宮城県仙台市にもオウム真理教の後継団体「ひかりの輪」、「世界平和統一家庭連合」(旧・統一協会)、「キリスト教福音宣教会」(旧・摂理)などの支部があり、活動している。コロナ禍以前には、公園での早朝スポーツや公共施設でのダミーサークルの活動がホームページやツイッターなどのSNSである程度確認できたのだが、ここ1年は更新がパタリと止まってしまった。不気味なまでの静けさである。

しかし、そうした中で少し前から注目しているのが「新使徒運動」というアメリカから入ってきたムーブメントの動向である。

1990年代半ばから20年以上にわたって相談を受け対策を講じてきたカルト宗教の諸問題、例えば「弟子訓練」の名のもとに行われるハラスメント、組織への過度な献身や献金の要求、正体隠しの勧誘行為といった問題点を共有し、さらに、この連載で折に触れて書いてきた宗教がらみの事象、日本の国宝や重要文化財級の寺社に油のような液体がふり撒かれた事件、ディズニーランドのアトラクション並みに行列ができる「預言カフェ」、そして「トランプ・カルト」などを線で結ぶように思われるのが、この「新使徒運動」である。

その正式名称は「New Apostolic Reformation」、直訳すれば「新しい使徒的宗教改革」である(本稿では日本で最初にこの運動について警鐘を鳴らしたウィリアム・ウッド氏に従い「新使徒運動」と呼ぶ)。その起源や沿革については改めて書くとして、この運動がこれまで日本社会で問題化してきたカルト宗教にはない特徴を有している点を指摘しておきたい。

従来のカルト宗教では、その入信には厳格に定められた手続きがあった。同一の教典や教本に基づく集中的な教え込み、入信のイニシエーションなどである。またひとたびその団体の信者となった者は、他の団体の行事や礼拝に参加することは禁じられ、その団体の活動に専念することが求められた。例えば「統一協会」や「摂理」の信者でありつつ、同時に日本基督教団の教会の信者として奉仕を続けるということは原理的にも現実的にも不可能だった。家族や一般社会から引き離された信者同士の相互監視的な共同生活を強いられる場合も少なくなかった。

しかし、「新使徒運動」の場合、従来のカルト宗教に劣らぬ階層組織(ヒエラルキー)に基づいた組織力をもっているにもかかわらず、多くの信者たちは伝統的な教団にそのまま所属し続け、一見それまでと変わらない日常を送る。いざという時に従う「権威」はこの運動独自の「使徒」や「預言者」という指導者である。言うなれば二重の信仰生活を送っているのだ。

前述のウッド氏によれば「新使徒運動」には統一された教理体系がなく、ただ「使徒だと名乗り、その使徒職が認められた人々を先頭にできたネットワーク」だ。この運動の代表者の一人であるピーター・ワグナーは、これを礼拝・伝道・宣教などにおける教会のあり方の「新しい形態と方法」であるという。

このような「新使徒運動」についてウッド氏は「長年のカルト研究の中で、初めて怖さを感じた。今まで見て来たグループの中で、最も危険なものだ」という(ウィリアム・ウッド『日本の教会に忍び寄る危険なムーブメント』より)。いったい何がどのように危険なのか、考えていきたい。(つづく)

川島堅二(東北学院大学教授)
かわしま・けんじ 1958年東京生まれ。東京神学大学、東京大学大学院、ドイツ・キール大学で神学、宗教学を学ぶ。博士(文学)、日本基督教団正教師。10年間の牧会生活を経て、恵泉女学園大学教授・学長・法人理事、農村伝道神学校教師などを歴任。

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