神学校での学びを終え、教会に遣わされる新卒者を対象とした「神学校新卒者エキュメニズム研修会」が3月14日、昨年同様オンラインで行われた(日本キリスト教協議会=NCC=教育部主催、NCC後援、日本聖書協会、日本キリスト教団出版局協賛)。牧師になる前に、エキュメニズムの学びと教派を超えた出会いを体験してほしいとの願いから、毎年この時期に開催しているもの。今年は西南学院大学大学院、東京神学大学大学院、九州バプテスト神学校、農村伝道神学校、日本バプテスト神学校、同志社大学大学院、日本聖書神学校から10人の新卒者が参加した。
「草の根(グラスルーツ)のエキュメニズム――都市/農村、教会/街路、神学/実践、roots/routesをめぐって」と題して講演した有住航(ありずみ・わたる)氏(日本基督教団下落合教会牧師)=写真=は、自身のエキュメニカル運動との関わりから教派を超えた出会いの重要性について語った。エキュメニズムは、世界教会協議会(WCC)総会をはじめ教派・教団の代表者による「超教派」の会議体というイメージが強い上、実際にそういう側面が多分にあるが、具体的な「現実・現場」で「必要とされ、担われ、花開き、 たえず新しくされるもの」と強調した有住氏は、それを「草の根のエキュメニズム」と名付けた。
また、WCC総会をはじめ、諸委員会のメンバーが、 教職/信徒の割合、 ジェンダーバランス、年齢・地域、 地理的・文化的なバランスを考慮し、適切に構成するよう厳しく定められており、2005年以降は、議決に関しても対話と合意形成のプロセスを重視するコンセンサス方式が取り入れられていることを紹介。そうした変化は、多数決になじまない文化をもつ人々、非ヨーロッパ圏の人々との経験と参与によってもたらされたという。
有住氏自身も、WCCのエキュメニカル研究所で研修生として学んだ2014~15年、さまざまなキリスト教文化を背景とする多様な人々と一緒に礼拝を作るという体験を経て、「あまりにも狭く偏ったキリスト教観と知識への気づき」が与えられた。それらの学びをふまえ、新卒者にも「多くの出会いを通じて、新しい『roots/routes』を歩むエキュメニカルな旅に生きよう」と促した。
NCC総幹事の金性済(キム・ソンジェ)氏による祝辞に続いて、日本キリスト教団出版局、日本聖書協会、AVACOの各担当者がそれぞれの働きについて紹介し、記念品を贈呈。最後に、実行委員長の小友聡氏(東京神学大学教授)による派遣の祝福と祈りによって閉じられた。NCC教育部総主事の比企敦子氏は、「困ったことがあったらいつでも、教派を超えて活動する諸団体の存在を思い出し、その働きを頼ってほしい」と呼び掛けている。