教皇、キプロスとギリシャを訪問 ギリシャ正教会の代表者らと面会「神の木は同じ聖霊のもとに育ち実を結ぶ」

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教皇フランシスコは12月2日午前、ローマのフィウミチーノ(レオナルドダビンチ)国際空港から特別機で、キプロスとギリシャの2カ国訪問に出発した。両国への訪問は、それぞれの政府とカトリック司教協議会の招きに応えるもの。バチカン・ニュース報道をもとに紹介する。

出発当日朝、教皇は住まいのサンタ・マルタ館で、難民たちと会見。シリア、ソマリア、アフガニスタンなどを出身とするこれらの人々は、ギリシャのレスボス島の難民キャンプを経て、現在ローマのカトリック系団体の支援を受けている。午後3時前、最初の訪問国キプロスのラルナカ空港に到着、キプロスの政府代表とカトリック関係者、バチカン市国とキプロスの国旗の小旗を振る子どもたちに迎えられた。

翌3日には、キプロスのニコシアの競技場でミサを捧げた。ミサの会場となったGSPスタジアムには、およそ1万人の信者が集った。説教で教皇は、イエスが2人の目の不自由な人をいやすエピソード(マタイ9:27~31)を取り上げ、その中にイエスに対する信頼、共に歩む姿勢、喜びに満ちた証しの大切さを話した。

4日にキプロス訪問を終え、ギリシャのアテネ国際空港に同日午前11時ごろ到着。官邸の広間で行われたギリシャ各界の代表および駐在外交団との会見で、同国訪問における最初の公式のあいさつをした。この中で教皇は、精神性、文化・文明の豊さあふれるギリシャの歴史に触れ、「アテネとギリシャなくしては今日ある形でのヨーロッパと世界は存在しなかっただろう」と述べる一方、「アテネは、人間の眼差しを高きに導くだけでなく、地中海のただ中で人々を結ぶ架け橋として、他者の存在にも目を向けるよう促されてきた」と指摘。「市民共同体『ポリス』の中で生まれた民主主義は、世紀を経て、人民が民主的に集う大きな家、すなわち欧州連合へと育ち、同時に世界の多くの民族に平和と兄弟愛の理想を築いた」「良い政治の基本は、ポジション作りではなく参加すること、共通善に配慮し特に最も弱い立場の人々に関心を持つこと」と語った。

さらに、気候変動やパンデミック、貧困の拡大など、今日の大きな課題を挙げつつ、多極主義を通して平和の道を開くことのできる国際共同体の必要性を説き、ヨーロッパ諸国が国家的エゴイズムのために分裂している状態にも触れ、「かつてはイデオロギーが東西の対話を妨げたが、今では移民問題が南北関係を不安定にしている」と話した。

教皇はその後、ギリシャ正教会のイエロニモス2世大主教をアテネ市内の大主教館に表敬訪問。大主教館の「主教座の間」で、ギリシャ正教会の代表者たちと会見した。「私たちは同じ根を有しながらも、残念ながら、世俗的な事柄や不信によって交わりを育むことをやめ、それぞれ離れて成長することになった」と両教会の歴史を振り返りつつ、「カトリック教会にとって、イエスと福音に相容れない行為や選択があったこと、利益や権力への渇きが一致を損なってしまったことを、恥をもって認めなければならない」「多くのカトリック信者が犯した過ちについて、神と兄弟に対して改めて赦しを願う必要を感じている。しかし同時に、私たちが同じ使徒的起源を有し、時代の過ちにもかかわらず、神の木は同じ聖霊のもとに育ち実を結ぶという確信は大きな慰めである」と語った。

ギリシャでは、全人口の約86%をギリシャ正教会の信者が占め、カトリック信者は1・22%と少数派。今回の訪問で、西洋の基礎を築いたギリシャの偉大な文明に触れた教皇は、初期のキリスト教は、この豊かな文明の中で信仰のインカルチュレーションの「実験場」を開始したと述べた。

教皇は5日、アテネ市内のバチカン大使館に、ギリシャ正教会のイエロニモス2世大主教の訪問を受けた。前日4日に教皇がイエロニモス2世を大主教館に訪問したことに対する答訪として行われたこの出会いは、およそ30分に及んだ。和やかな会見の後、教皇と大主教は互いに記帳を行った。イエロニモス2世大主教は、「2021年12月5日、聖サバスの祝日、私と随行員は、教皇、ローマの聖なる兄弟である、フランシスコのギリシャ訪問に感謝するために訪れました。ここにあいさつを送り、良き旅を祈願します。聖なる神が私たちを祝してくださいますように」と記した。

訪問を終えた6日に教皇はアテネ国際空港からローマへ向け出発し、帰途に就いた。(CJC)

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