香港のキリスト教メディア「時代論壇」の報道によると、「香港2020福音宣言」の起草者として名を連ねていた王少勇氏(基督教会活石堂牧師)と楊建強氏(カンバーランド長老教会香港中会牧師)=写真左から、6月末の「時代論壇」インタビュー取材当時=が、それぞれ教会の職を辞し、8月上旬に香港を離れたという。両氏は、香港の牧師や神学者ら有志による「香港牧師ネットワーク」の立ち上げ以前から積極的な発言を続け、同宣言の起草にも中心的に関わっていたが、国家安全維持法案施行後、親中派メディアから名指しで批判されていた。
同じく宣言の起草者の一人だった陳恩明氏(基督教豊盛生命堂顧問牧師)によると、同ネットワークは、当初の発起人・宣言起草者の20人はすでに解散し、新しい担当者の下でフェイスブックページの運用と祈祷会開催のみの活動を継続しているという。
王少勇氏と楊建強氏の2人が香港を離れた理由について、陳恩明氏は「彼らが尾行、脅迫、警告を受けていたかなどは明らかではないが、名指しで批判されたことで、周辺の人たち、特に自分が仕える教会の群れにまで攻撃が向けられることを心配していたのではないか」と話す。さらに陳氏は、「こうした状況は非常に深刻だ。長年にわたり献身的に教会に仕えてきた牧師たちがこれほどまでの圧力を受けなければならないというのは、突然のこと。しかし、こうした移民の動きが広がるのも理解できる」と、両氏が香港を離れざるを得なかったことに理解を示した。
陳恩明氏は、自身も含め「香港牧師ネットワーク」のメンバーは、それぞれに圧力を受けているが、「牧師たちは清き心と平安な心で状況に対処し、自ら混乱に陥らないようにし、善良な働き人であり続けるよう努力すべきであり、折り合いをつけようと妥協する必要はない」と、同労者たちを励ましている。
王少勇氏と楊建強氏の行方は明らかにされていない。「時代論壇」が両氏と連絡を取りインタビューを試みた際には婉曲的な辞退の返事があったが、彼らの身辺は無事だという。香港の牧師たちが置かれている状況は確かに厳しいものがあるが、香港教会のある関係者は「現在のところ、こうした個別の事件以外には、宗教界全体に対する組織だった迫害はまだない」との見方を示している。(報告=松谷曄介)