2013年の刊行より話題を集めたスコット・マクナイトの著作『福音の再発見―なぜ“救われた”人たちが教会を去ってしまうのか』が、2020年9月により読みやすく、コンパクトになって復刊。新装改訂版の出版を記念して、11月21日にZoomを介したオンライントークライブ「福音は本当に“再発見”されたのか」が開催された。
なぜ多くの若いキリスト者が、今日、教会を去ってしまうのか? 同書では教会で語られている「福音」を見直し、イエスが語ったオリジナルの「福音」の再発見と、教会の再構築を目指す。著者のマクナイトはこう語る。
「私たちは、イエス・キリストの弟子を作ることよりも、決心させることにこだわりすぎていないでしょうか。そのようなこだわりは イエスの福音が本来意図していたものを台無しにしてしまうのです」
トークライブには翻訳を手がけた中村佐知氏、再版にあたって尽力した巣鴨聖泉キリスト教会牧師の小嶋崇氏に加え、特別ゲストとしてゴスペルシンガーの岩渕まこと氏が登場。大統領選後のアメリカの現状から、アメリカにおける「福音派」の様相、同書が示す「オリジナルの福音」とは、など話題は多岐にわたった。
以前、「月刊いのちのことば」誌の企画「50人が選ぶ この一冊 ~本を通して、神に出逢う~」で同書を推薦したという岩渕氏は、第1章の中で書かれた「福音派は“救い派”であるという言葉を読んだ時に、すとんと肚(はら)に落ちました」と語る。
「僕らがクリスチャンとして活動をしているときに、誰かを救いに導くことだけが目標になっていると感じていたんです。この本をきっかけに、聖書全体から福音をとらえていくという目の開かれ方、神の国の味わい方を教えてもらった気がしています」
中村氏も同書をきっかけに福音に対する理解が変わったと言い、「救われる時に『これであなたは天国に行けますよ』と言うが、実際はクリスチャンになってからその後の人生をどう生きるかが重要。個人の救いと聖化にとどまるのでなく、神様がこの地でなさっておられることに参画するために、一人ひとりが自分の内面や他の人の声によく耳を傾けつつ、祈りを通して神様のみ心を識別していくことが大切ではないか」と提起した。
小嶋氏は、クリスチャンにとってのゴールは、伝道や救いに導くだけのことではないとし、「どんな職場やコミュニティーであっても、キリスト者として生きていること自体が広い意味での宣教であり、神の国のために生きるということ」と語る。
「若い時に、心にイエス・キリストを救い主として受け入れた人たちが社会に出る時、社会とキリスト教に接点がないと感じるのではないでしょうか。社会と関わりを持たないキリスト教にはどんな未来や意味があるのか。若い人たちは少しずつ気づき始めているんじゃないかと思います」
小嶋氏曰く、同書は「聖書の物語を一つひとつ丁寧にさらいながら、福音の流れを見出だす硬派な1冊」。クリスチャンとして自身のあり方や信仰生活に疑問を感じている人は、今一度、キリストが語るオリジナルの「福音」に触れてみてはいかがだろうか。
新装改訂版『福音の再発見──なぜ“救われた”人たちが教会を去ってしまうのか』
スコット・マクナイト (著)、中村 佐知 (翻訳)
キリスト新聞社
1800円(税別)