【世田谷美術館・9月4日まで】「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界

『しろくまちゃんのほっとけーき』(1972年、こぐま社)などで知られる絵本作家・わかやまけん(若山憲、1930〜2015)。その創作の全貌を紹介する初めての展覧会「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」(世田谷美術館、東京新聞主催)が、世田谷美術館(東京都世田谷区)で開催されている。9月4日(日)まで。

『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)より ©わかやまけん

わかやまけんは、岐阜県岐阜市生まれ。グラフックデザインの仕事を経て、24歳で上京。教科書の挿絵や紙芝居などを手掛けた後、絵本の創作活動の道に入り、詩的な画風で独特の絵本の世界を築いた。その一方で、絵本の研究誌『月刊絵本』創刊に関わり、絵で読む絵本「純絵本」を提唱するなど、絵本文化の普及にも尽力した。

同展では会場を、▷紙芝居からの出発 こぐま社との出会いから▷こぐまちゃん、しろくまちゃん誕生、▷絵を読む絵本「純絵本」をめざして▷ひろがる わかやまけんの世界▷一点で物語る、の5つの章で構成。最もよく知られる「こぐまちゃんえほん」シリーズを中心に、絵本原画や絵本創作の過程で刷られたリトグラフのほか、雑誌の表紙原画、関連資料など約230点によって、わかやまけんの豊かな世界を紹介する。

『こぐまちゃんのみずあそび』(1971年、こぐま社)より リトグラフ/こぐま社蔵

2020年に誕生50周年を迎えた「こぐまちゃんえほん」シリーズは、こぐま社の創業者で編集者で、クリスチャンの佐藤英和氏(1928〜2022年)の呼びかけにより、「日本の子どもたちがはじめて出会う絵本」を作るプロジェクトとして始まった。1970年に、第1作『こぐまちゃんおはよう』が誕生して以来、世代を超えて読み継がれ、累計発行部数1000万部をこえる大ロングセラー絵本となっている。

同シリーズは、絵本のページそのままのいわゆる原画は存在しない。1ページごとに6色分の版を描き分け、刷り重ねる方式によって、リトグラフの技法で制作されているからだ。こうした技法は、手作りの手法で、かつ美しく日本らしい色で絵本を作ろうした「こだわり」だという。同展では、初版の制作時に試し刷りされたリトグラフが展示されているが、実際の絵本とは発色が異なっている。それは、約50年の時を経た経年変化や、絵本の用紙とはインクの染み込み具合が違う版画用紙に刷られているためだ。

『りぼんをつけた おたまじゃくし』(1967年、野村トーイ)より 原画/個人蔵

また、同シリーズのほかに、優しく幻想的な絵に現代社会へのメッセージをのせたもうひとつの代表作『きつねやまのよめいり』(1968年/1978年改訂新版、こぐま社)、水彩の滲(にじ)みを生かした繊細なタッチの『りぼんをつけた おたまじゃくし』(1967年、野村トーイ)、絵と文の両方を手がけた「おばけのどろんどろん」シリーズ(1980〜89年、ポプラ社)などの原画が出品。ほかにも昔ながらの民話絵本や詩集への挿画などをとおして、わかやまけんの多彩な創作世界が広がる。

『おばけのどろんどろん』(1980年、ポプラ社)より 原画/個人蔵

「詩人や思想家や文学者のような発想を、シナリオライターや建築家のように計算し、演出家やデザイナーのように構成し、画家やイラストレーターのように描き、詩人のことばとデザイナーの感覚で絵本にまとめるということを一人でやれるような絵本作家にぼくはなりたい」

『月刊絵本』(1978年2月号)で、わかやまけんは、このように語っている。展示作品の懐かしさと合わせて、新しい発見を探しに、わかやまけんの絵本の世界に出かけてみてほしい。

開館時間は、午前10時〜午後6時(入場は午後5時半)。会場は世田谷美術館1階展示室。観覧料は、1200円(一般 )、1000円(65歳以上)、800円(大高生)、500円(中小生)。 ※障害者の方は500円。ただし小中高大生の障害者の方は無料。介助者(当該障害者1名につき1名)は無料(予約不要)。※未就学児は無料(予約不要)※高校生、大学生、専門学校生、65歳以上の方、各種手帳をお持ちの方は、証明できるものを提示。また、オンライン・クレジット決済またはd払いにて「日時指定券」をこちらから発売中。

 

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