ラファエロにレンブラント、モネ… 西洋美術史を彩る巨匠たちの競演 上野の東京都美術館で「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」開催中

東京・上野の東京都美術館で「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」が開幕した。

スコットランド国立美術館は、世界でも有数の西洋絵画コレクションを誇る美術館だ。
本展では、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、ルノワール、モネ、ゴーガンなど、西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品に加え、ゲインズバラやレノルズ、ブレイク、コンスタブル、ターナー、ミレイなどイングランド出身の画家や、レイバーンやラムジー、ウィルキー、ダイスら日本ではなかなか見ることのできない、スコットランド出身の画家による作品も含め、総勢74名の画家による油彩画、水彩画など約90点を展示。素描や習作(練習のための作品)も数多く展示され、ルネサンス期からポスト印象派が活躍した19世紀後半までの西洋美術史に触れることができる。

本展は、プロローグとエピローグに加え、「ルネサンス」「バロック」「グランド・ツアーの時代」「19世紀の開拓者たち」と時代ごとに分けられた4章で構成されている。

第1章「ルネサンス」ではフィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを中心に、ヨーロッパに広まったルネサンス期の作品を紹介している。ルネサンスを代表する画家、ラファエロ・サンツィオによる《「魚の聖母」のための習作》や、アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》など宗教画も多く並ぶ。

Raphael (Raffaello Santi)

なかでも目を引くのは、エル・グレコによる《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》だ。赤い衣の上に青いローヴをまとい、右手は祝福のポーズを取り、左手は世界を表す水晶の球体の上に置いたキリストの半身像で、「サルバトール・ムンディ(救世主としてのキリスト)」と呼ばれるこの図像は、さまざまな画家が手がけている。明暗がくっきりと分かれた作品で、憐れみをたたえているような、キリストの穏やかな眼差しが印象的だ。

ちなみに、同展で紹介されているアンドレア・デル・ヴェロッキオによるとされる《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》に描かれた聖母も赤いドレスの上に青いローヴをまとっているように、一般的に西洋絵画では赤い衣と青いローヴの組み合わせは聖母マリアを表すとされているが、実際には聖母マリアに限定されているわけではないようだ。赤は「慈愛」、青は「天の真実」という意味があり、レオナルド・ダ・ヴィンチが「最後の晩餐」で描いたキリストも赤い衣の上に青いローヴをまとった姿だ。

El Greco (Domenikos Theotokopoulos)

第2章「バロック」では、17世紀のヨーロッパに活躍した革新的な画家たちを紹介。レンブラント・ファン・レインによる《ベッドの中の女性》は、旧約聖書外典「トビト記」(*)より、新婚初夜に新郎を7度悪魔に殺されたサラが、8番目の夫トビアと悪魔との戦いを見守っている様子ではないかと考えられている。しかし、作者による解説などは一切なく、どのように解釈するかは見る者にゆだねられている。

*旧約聖書外典は正典として認めるかどうかは、諸教派によって異なる。日本聖書協会では正典のみを収録した聖書のほかに、「旧約続編付き」の名称で外典付き聖書を販売している。

アダム・エルスハイマー《聖ステパノの石打ち》は、新約聖書「使徒言行録」6~7章でユダヤ人たちによって石打ちにされ、殉教したステパノを描いた作品。ステパノはキリスト教徒で最初に殉教したと考えられている人物である。

宗教画ではないが、この章の見どころはディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》だろう。老婆がまとうベールや、陶器、金属、ガラス、卵に火が通っていく様子まで一つひとつの質感が見事に描き分けられており、当時20歳前だった若い画家の計り知れない才能を感じる。

Rembrandt (Rembrandt van Rijn)

第3章「グランド・ツアーの時代」では、18世紀のフランスや英国で活躍した画家を中心に紹介している。グランド・ツアーとは17~19世紀にかけて英国の上流階級の子弟たちが行ったヨーロッパ大陸周遊旅行だ。この時代、英国では肖像画が発展し、三大肖像画家と称されるゲインズバラ、レノルズ、ラムジーらが人気を博した。一方、フランスではフランソワ・ブーシェなど牧歌的な理想郷を描いた作品が好まれたほか、フランチェスコ・グアルディ《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》など景観図や風景画も多く描かれた。

Diego Velazquez

第4章「19世紀の開拓者たち」では、19世紀半ば頃に登場した外光派(屋外で自然描写を行う画家)をはじめ、印象派やポスト印象派、ナビ派など個性豊かな画家たちの作品を展示。
クロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》やピエール=オーギュスト・ルノワール《子どもに乳を飲ませる女性》、ジョン・コンスタブル《デダムの谷》など、見どころは多いが、見る者に強烈なインパクトを与えているのが、ウィリアム・ブレイクによる《石板に十戒を記す神》だろう。旧約聖書「申命記」より、ひざまずくモーセの前に神が立ちはだかり、石板に十戒を記そうとする場面を描いたもので、全体に赤い炎が燃えているような表現が印象的だ。詩人、画家、銅版画家として活動したウィリアム・ブレイクは、その独特な作風から理解を得にくかったというが、今なおコアなファンが多く、日本の文学にも影響を与えている。

会期は7月3日までで日時指定予約制。
本展特設ショップでは、この記事で紹介したエル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》、ウィリアム・ブレイク《石板に十戒を記す神》をデザインしたTシャツなど、ユニークなグッズが販売されている。

スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち

・会期 2022年4月22日(金)~7月3日(日)
・会場 東京都美術館 企画展示室
・開室時間 9時半~17時半 *金曜日のみ20時まで(入室は閉室の30分前まで)
*夜間開室については展覧会公式サイトで確認
・料金 一般 1,900円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,400円
・主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション
・休室日 月曜日
・お問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・公式サイト https://greats2022.jp

関連記事

 

オンライン献金.com