「京都ハリストス正教会」現役最古の大型木造聖堂 新たに国の重要文化財に

国の文化審議会は11月19日、明治時代に建てられた「京都ハリストス正教会生神女(しょうしんじょ)福音大聖堂」(京都市中京区)を重要文化財(重文)に指定するよう、末松信介文部科学相に答申した。国宝を除く京都府内の重文建造物は247件626棟になる。

写真:京都ハリストス正教会提供

京都ハリストス正教会生神女福音大聖堂は、ギリシャ正教の西日本における布教活動の拠点として1903年(明治36年)に完成。日本ハリストス正教会の本格的な木造聖堂としては、国内に現存する最古のものとなる。また、日本正教会の創建者であるニコライ主教(1836~1921年)が、成聖*祈祷した唯一の現存する聖堂でもある。聖堂名称「生神女福音」は、一般には聖母マリアの受胎告知を記念している。

ロシア・ビザンチン様式、木造十字形平面聖堂で217平方メートル。屋根に飾られた十字架の下に丸屋根(クーポル)があり、正面に鐘楼を構える美しい外観が特徴。内部には、信者が集う「聖所」の奥に神父が祈りをささげる「至聖所」が設けられ、その間を隔てる「イコノスタス」と呼ばれる30枚の肖像画で作られた壁は、ロシア帝政時代にロシアで制作され、意匠を凝らしたものとして高く評価されるている。

写真:京都ハリストス正教会提供

同教会の及川信長司祭はメディアのインタビューで、「重要文化財の指定は、私たち信者や歴代の神父様の悲願だったので、とてもうれしく喜ばしいです。地域の皆さんの協力も得て聖堂を維持し、多くの皆さんに拝観に来ていただきたい」と話している。

ギリシャ正教会、もしくは東方正教会とも呼ばれる「正教会」は、1861年、ニコライ主教が函館ロシア領事館付司祭として来日し、日本での宣教が始まった。京都での伝道は1880年に開始され、1883年には、船井郡園部村に京都で最初の正教会の会堂が建立された。そして、1989年に京都市の中心部「押小路通高倉西入る」に講義所を設立した。

生神女福音大聖堂は、1894年に着任したシメオン三井道郎神父が、現在の境内地「柳馬場通二条上る(やなぎのばんばどおりにじょうあがる)」の京都能楽堂跡地を購入し、京都府旧庁舎を手がけた府技師松室重光の設計監理により建設が始まった。1901年12月には外装がほぼ完成するが、ロシアから移送される予定のイコノスタス(聖障)など、聖器物・内装の整備に時間がかかり、全てが完成するまでに、その後1年半の月日が費やされた。

第二次世界大戦末期には、「建物疎開」の命令を受けて取り壊し寸前となったが、終戦により幸いにも取り壊しを免れ、1986年に京都市より有形文化財に指定。1987年、聖堂銅板屋根全面改修をはじめとした大規模な修復工事を、1999年には床板修理・絨毯復原新調・内外塗装修理等を行い、現在に至っている。2000年5月には、ロシア正教会アレクシイ総主教も来訪している。

*正教会において「聖なるものと成す」の意で、ここでは神とのつながりを回復することを指す。

 

 

 






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