伝説の無声映画「殉教血史 日本二十六聖人」聖イグナチオ教会で復活上映会

伝説の無声映画「殉教血史 日本二十六聖人」上映会(角川文化振興財団主催)が2月4日、カトリック麹町聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で開催された。角川文化振興財団による「バチカンと日本100年プロジェクト」の関連プログラムの1つとして開かれたスペシャル鑑賞会で、公開当時と同じく活動弁士・楽団付きの演出で実施し、事前に抽選で当選した300人が鑑賞した。

礼拝堂で開催されたスペシャル鑑賞会には300人が集まった=2月4日、カトリック麹町聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で。

同作品は、豊臣秀吉のキリシタン弾圧政策により、長崎市・西坂の丘で殉教した日本二十六聖人の壮絶な運命をドラマチックに描いた歴史超大作。長崎・浦上出身のカトリック信徒で、朝鮮在住の資産家・平山政十が、私財6億円を投じて1931年に製作した。日本国内だけでなく、欧米でも上映され、米国のカトリック雑誌「The Lamp」(1932年)では、「アメリカで初めて公開された日本映画」として紹介している。

役者陣も豪華で、山本嘉一をはじめ、片岡千恵蔵、山田五十鈴、浦辺粂子など往年の日本映画を代表するスターたちが名を連ねる。また、映画後半での、ルドビコ茨木、長崎のアントニオ、トマス小崎を演じる子役らの芸達者ぶりは物語をより悲劇的にし、そのいじらしい姿は観客の涙を誘った。さらに、聖職者と信者たちが長崎・西坂へ向かう途中、弱りきったペトロパプチスタ神父に手を差し伸べようとする僧侶の登場も感動的だ。

活動写真弁士の澤登翠さん。

弁士を務めたのは、活動写真弁士の第一人者として国内外で活動する澤登翠(さわと・みどり)さん。その解説によって、音のない映像は魔法がかかったように臨場感あふれるものとなり、観客はスクリーンに釘付けとなった。さらに、無声映画専門楽団カラード・モノトーン(楽長:湯浅ジョウイチ)が奏でる美しい調べが、壮大な歴史ドラマをさらに印象深いものとした。

駐日ローマ教皇庁のレオ・ボッカルディ駐在大使。

上映に先だち、今回の上映会の後援となっている駐日ローマ教皇庁のレオ・ボッカルディ駐在大使が挨拶に立ち、同作品について次のように語った。

この映画は、日本の文化と殉教の勇気が描かれています。クライマックスは、浜辺で十字架に磔にされた人々が、槍に刺されるシーンで、そこに母親がいることは、イエス・キリストが磔刑されたときのマリアの存在を彷彿させます。また、磔刑の場面から、3世紀後の1862年6月8日、教皇ピオ9世の時代にバチカンで行われた列福式のシーンはとても美しいものです。

ボッカルディ駐在大使が「美しい」と表現したエンディング・シーンは、当時ローマまで行き撮影されたものだ。続けて、2016年にマーティン・スコセッシ監督が製作した米国映画「沈黙ーサイレンスー」を引き合いにしながら、同作品には罪の意図が明確に表現されていると述べ、カトリック教会の「聖殉教者の祝日」の時期に同作品を見ることは大変意義深いと伝えた。

イエズス会日本管区長のレンゾ・デ・ルカ神父も、ビデオメッセージで次のように話した。

無声映画では、生の解説を聞きながら、自分で考えて映画を見なければなりません。受け身で見るのではなく、自分もその映画に入って登場人物と一緒になって、心の目で体験してください。きっと祈りのような心が起こり、二十六聖人の物語に直接関わっていることに気づくと思います。

日本二十六聖人(にほんにじゅうろくせいじん)は、豊臣秀吉のキリシタン弾圧政策によって、1597年2月5日に、現在の長崎市西坂町の海に突き出た丘の上で、処刑されたカトリック信者(外国人宣教師6人、日本人信徒20人)。このとき長崎市民約4000人が見守ったといわれ、そのほとんどがキリシタンだった。日本における大規模なキリシタン弾圧の始まりとされている。この処刑の様子は、ルイス・フロイスによって報告され、世界中に伝わった。処刑から265年が経過した1862年、教皇ピオ9世は26人の殉教者を聖人に列した。映画「殉教血史 日本二十六聖人」は、この列福式がラストシーンで、「The End」の代わりに「神は愛なり」で幕を閉じる。

無声映画専門楽団カラード・モノトーン。

鑑賞会に訪れたカトリック信徒の女性(50代)は、「とても胸が打たれる映画でした。弁士と音楽だけなのに、セリフが不思議に心に残っているのは、自分も映画に参加していたからだと思います。二十六聖人の尊い犠牲は、イエス様を思い起こさせ、信仰というものを改めて考えさせられました」と感想を述べた。

#バチカンと日本100年プロジェクト

 






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