カンヌを熱狂!映画『ドライブ・マイ・カー』公開 喪失から再生への旅 

今年度のカンヌ国際映画祭で日本映画としては史上初となる脚本賞のほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞し、4冠獲得の偉業を果たした話題作『ドライブ・マイ・カー』が、20日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショーされる。

4冠のうちの1つ、カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞は、キリスト教徒の映画製作者、映画批評家らにより、1974年に同映画祭の独立部門として創設された賞。カトリックとプロテスタントの組織「SIGNIS and INTERFILM」の審査員6人によって「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られる。これまで、キリスト教国でないアジア諸国からは、6人選出されており、その中で、日本では『EUREKA』(青山真治、2000年)、『光』(河瀬直美、2017年)に次いで3作目となる。

(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

同作品は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」(文藝春秋刊)に収録された「ドライブ・マイ・カー」を、『偶然と想像』で第71回ベネチア国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督・脚本により映画化したもの。濱口監督は、妻を失った男の喪失と希望を、原作の精神を受け継ぎつつも、圧倒的な脚本力と豊かな映画表現で、映画史を書き換える新たな傑作を誕生させた。

物語は、舞台俳優で演出家の家福悠介と、脚本家の妻・音が、満ち足りた生活を送っているところから始まる。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた家福は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車の赤いサーブ900ターボで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく───。

(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

主人公・家福を演じるのは、日本映画界に欠かせない名優、西島秀俊。2005年に同じく村上春樹の短編小説を映画化した『トニー滝谷』(市川隼監督)で、ナレーションを務めているが、今回は、行き場のない喪失感を抱えながらも、希望へと一歩を踏み出していく心の機微を体現している。また、ヒロインのみさきを三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音を霧島れいかがそれぞれ演じる。

劇中には、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」が9つの言語を交えた多言語劇として展開し、映画を重層的なものとしている。人を愛する痛みと尊さ、信じることの難しさと強さ、生きることの苦しさと美しさといったことが、チェーホフの芝居の台詞に絡みつきながら物語は進んでいく。ラスト近くで、家福が「生き残った者は、死んだ者のことを考え続けなければいけない。僕や君はそうやって生きていかなければいけない」という台詞が、「ワーニャ伯父さん」の最後の場面でソーニャが発する台詞と重なるときが、この映画で最も美しい瞬間だ。

苦悩に耐えながらも、生きることを選んで再生へと向かう登場人物たちの姿は、今を生きる多くの人たちを勇気付けるはずだ。人間は分かり合えないことのほうが多いのだ。それでも逃げずに向き合ったときに、お互いの心の殻が少しずつひび割れ、光が漏れ出すのだ。韓国の地で、サーブ900を運転するみさきの穏やかな表情でこのことを確信した。

原作:村上春樹 「ドライブ・マイ・カー」 (短編小説集「女のいない男たち」所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介 大江崇允 音楽:石橋英子
製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会 製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド制作プロダクション:C&Iエンタテインメント 配給:ビターズ・エンド
(C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2021/日本/1.85:1/179分/PG-12
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