教会での未信者葬儀は可能か?!「キリスト教葬儀の学校」キックオフイベント開催

終活と葬儀を専門的に学べる「キリスト教葬儀の学校」(監修:清野勝男子)開講2年目突入を記念して、誰でも無料で参加できるキックオフイベントが8日、ライフワークス主催で開催された。会場となった東京プレヤーセンター アルファチャペル(東京都千代田区)を会場に、対面とウエブ会議サービスZoomを使ったオンラインのハイブリット型で行われた。全国から約30人が参加した。

キックオフイベントには、キリスト教葬儀の在り方、宗教学の死生観や終活に興味がある人など様々な人が参加した。=7月8日、東京プレヤーセンター(東京都千代田区)で。

「キリスト教葬儀の学校」は、キリスト教専門葬儀社のライフワークス(代表取締役:野田和裕)が昨年6月に開始したオンラインセミナー。月額500円で、キリスト教葬儀に特化した大学さながらの専門的な学びと、すぐにできる実践的な終活を毎月Zoomで配信し、これまでの仏式葬儀のあり方が変化する中、キリスト教文化の葬儀の可能性や、未信者に開かれたキリスト教葬儀など神学的な視座で学んでいる。

今回のキックオフイベントでは、同学校の校長でメイン講師でもある清野勝男子(せいの・かつひこ)氏(日本同盟基督教団土浦めぐみ教会牧師)が、「超高齢多死社会の日本。キリスト教葬儀から関わる教会の役割とは!?」というテーマで講義を行った。清野氏は、これまで土浦めぐみ教会において200人以上の葬儀を実践し、同時に東京基督教大学で日本宣教におけるキリスト教葬儀のあり方を研究する葬儀のエキスパートだ。

清野勝男子氏。講演はZoomをとおして行われた。

講演の前半では、超高齢化社会における教会の取り組み事例として、土浦めぐみ教会が1990年より高齢信徒たちの要望に応える形で設置した部会「喜楽希楽(きらきら)会」について報告した。ここでは、高齢者が若い信徒たちに気兼ねすることなく自分たちのペースで奉仕したり、旅行やレクリエーションを楽しんだりしながら教会生活を送っていることを紹介し、高齢化した教会が今では高齢者が輝く教会となっていることを伝えた。

清野氏が高齢信徒に特に心を寄せるようになったのは、インドネシアでの宣教を終え同教会に赴任した時からだ。多くの高齢信徒を目にした時、ヘンリ・ナウエンの「歳を重ねるのは光に向かう道」という言葉を思い起こし、「幸いな晩年を過ごせるためなら何でもしよう」と決意したという。喜楽希楽会はその思いが形になったものだ。

その一方で多死社会における教会の働きについても大きなビジョンを持つ。想像以上に速いスピードで進む人口減少は、教会においても深刻な問題となっている。30年以上前から受洗者よりも死者数のほうが多くなっている現実がある。このことを踏まえ教会での未信者の葬儀に宣教の可能性を見ている。同教会で清野氏が行った200人の葬儀のうち50人が未信者だった。教会で葬儀を行い、納骨することで、教会とのつながりができ、故人を偲ぶために教会に通うことで魂の救いへと導かれていくようになると話す。

現在では、カトリック教会およびプロテスタント教会の各教派で葬儀の式文の中に、未信者への葬儀に対する配慮が記されているが、全国的に見れば未信者の葬儀の数はまだまだ少ない。教会が未信者の葬儀に積極的になれない理由の一つに神学的な問題があるという。清野氏は、神さまの恵みである一般恩恵を「生が許されたこと」と捉え、故人がクリスチャンにならなかったとしても、神によって創造され、地上で生かされ、様々な恩恵を受けた人として教会で葬儀をすることは可能であることを語った。

続いて、一般恩恵に基づく未信者葬儀の内実についても言及した。その目的は①遺体を丁寧に葬ること、②遺族を慰め、励ますこと、③参列者自身が、故人の人生から何かを学ぶこと、④個人の一生を許された「いのちの創造者」を拝することの4つで、これらに沿って慰めと希望を見出すことができるのキリスト教葬儀を執り行っていく。日本の葬儀文化とキリスト教葬儀の文化の差異にも触れ、神仏融合の宗教文化の中で変化してきた仏式葬儀とキリスト教葬儀の差異の特徴は、神概念はにおける神概念の差によることを説明し、キリスト教信仰の神概念の豊かさが、遺族にとって大きな慰めになると力を込めた。

会場参加の人たちによるディスカッションタイム。

講演後には「キリスト教葬儀の学校」でも取り入れているディスカッションタイムとなり、そこで語り合った内容を各グループごとに発表した。その中では次のような意見や感想が聞かれた。

・結婚式と同様に葬儀も執り行うことを外に向けて公表するようにしたらどうか。
・神学的な観点からも教会で葬儀が行えることを改めて分かった。
・今までのキリスト教会の常識に閉じこもっていてはいけないと思った。
・「特別恩恵」でなければ葬儀はできないという教会の流れの中で、今後どのように未信者に向けての葬儀を行っていけるか。クリスチャンでない人に慰めと希望のメッセージを何としても届けたいと思っている。
・未信者の結婚式は行ったことがあるが、葬儀は行っていない。必要性はあると思う。教会が普段から未信者との接点を持つことも大切なのではないか。
・未信者のキリスト教葬儀には抵抗があったが、今日の話を聞いて新しい視点が与えられた。未信者には大きな配慮が必要であることがよく分かった。

「キリスト教葬儀の学校」8月7日(月)開講。月額500円(自動引き落とし)で月2回の通常講座、特別カリキュラムを受講できる。講座時間は後7時〜8時半で、無期限のアーカイブ配信もある。講師は、清野氏をはじめ、現役行政書士や遺品整理士など終活のプロフェッショナル達がゲスト講師として登壇する。詳細・申込みはこちらから。

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