神戸国際支縁機構がウクライナ訪問 戦争孤児のために「カヨコ・チルドレン・ホーム」建設を

「神戸国際支縁機構」(神戸市垂水区)理事長の岩村義雄さん(神戸国際キリスト教会牧師)は、5月28日〜6月12日にかけて「カヨ子基金」代表の 佐々木美和さんと共にウクライナを訪問し、「宗教帝国のエクスーシアが世界を滅ぼす――第一次ウクライナ・ボランティア報告」と題するレポートを発表した。

国内外で被災地支援に取り組んでいる同機構だが、17年には、その前の年にがんのため亡くなった岩村さんのお連れ合い・カヨ子さんの名前を冠した「カヨ子基金」を設立し、世界の孤児たちを支援する活動にも力を入れている。現在、戦禍により親を亡くしたウクライナの子どもたちを支援するために「カヨコ・チルドレン・ホーム」を建設することを計画しており、今回の訪問も戦争孤児たちと関わりを持つことが目的だった。

参列した聖ウラジーミル大聖堂(キーウ)の礼拝(2022年6月5日撮影)

岩村さんらは、ポーランドを経由し、ウクライナの首都キーウに入った。ロシア軍はキーウ周辺から撤退したとはいえ、「ウ〜ウ〜」というサイレンがときおり鳴り響き、そのたびに市民たちは、スマホを取り出し空爆の状況をチェックする。また、道路脇のいたるところに「ヘッジホッグ」と呼ばれる戦車が侵入するのを封鎖するための鉄塊(てっかい)が置かれている。7日間の滞在中、被害者は出なかったが、1回だけ爆撃があったという。

今回の訪問では、兵庫県庁や神戸市役所の尽力を得て用意したゼレンスキー大統領宛ての親書を手渡す計画があったのだが、安全性の問題から実現しなかった。しかし、6月2日、キーウの市長であるビタリ・クリチコ氏に会うことができた。市長は、元世界ヘビー級チャンピオンで、身長2メートルの大男の鋭い眼光の持ち主だが、笑顔はとても柔和で、岩村さんらを歓迎し、宿舎の調整までしてくれた。さらに、日本への親書ももらうことができた。

岩村さんは、ロシア軍が一方的に悪で、ウクライナが善玉という二元論の構図で刷り込むような画一的なマスコミの報道内容に対して疑義があった。今回の訪問では、①ブチャの橋などを爆破したのはロシア軍なのか、②同じ宗教環境で育っていて,ウクライナ住民を皆殺しにできたのか、③小さなウクライナ軍は優勢で、ロシア軍は後退を余儀なくされているのはどうしてか、という3点についての真偽も明らかにしたかったという。

印象的なのは、ロシア語も話すウクライナのジトームィルのヴィクトールさん(65歳)が語ったことについて、岩村さんが述べた言葉だ。

「自らをロシア人とみなすかウクライナ人とみなすか、が決定的ではない。どちらの国籍かではなく,どちらを支持するかは、時、場所、選択に依存している」と。ヴィクトールさんの言葉からも、同じ民、同じ正教会なのに、血を流すのは馬鹿げているという発言は考えさせられる。ましてや、よその国が、「人権」「正義」「民主主義」という世界観を押しつけるのは、戦局を一層複雑にするだけだと気づかされる。

岩村さんらは、キーウに入った初日から孤児に出会うために歩き続けた。街角で、食事や、戦争募金を請う子ども・青年たちに近づき、親がいるかどうかたずねる。コミュニケーションの原点は、「子どもの親はなぜ殺されねばならなかったのか」「ロシアに対してなにも悪いことをしていないのにひどい目にあった理不尽さをどう受け止めればいいのか」「親を失った子はどう生き延びることができるのか」だ。

ブチャの聖アンドリア教会の地下で亡くなった犠牲者を前に悲嘆にくれる男性

すでに、アジア、オセアニア、アフリカなど10カ所に「カヨコ・チルドレン・ホーム」がある。すべてゼロから起こし、現地の人たちに助けられている。土地の交渉も毎回一苦労であるが、それでも続けられるのは、聖書に、「……互いに慈しみ、憐れみ合え。寡婦、孤児、寄留者、貧しい者を虐げてはならない。互いに悪を心にたくらんではならない」(ゼカリヤ書7章9、10節)とあるからだ。

「カヨコ・チルドレン・ホーム」には、5人ほどの孤児が共同で大人になるまで生活する。日本の里親から毎月3千円ずつ送金されるが、現地で、孤児たちの身の回りの世話をする人を見つけなければならない。さいわいにして、孤児を世話した経験を持つボランティア精神にあふれた女性に出会うことができた。また、キーウ国立大学のレオニド・ブラヴィン名誉教授とも知り合いになり、次回、ウクライナ訪問の際には、ホームの建設場所など相談に乗ってもらえることになっている。

岩村さんは、今回の訪問で、自分たちの働きが、戦時下にあるウクライナ人に共感を与えたことは、訪問の大きな慰めになったと話し、第一次ウクライナ・ボランティア報告の最後こう結んでいる。

権力(エクスーシア)の座に就くと、理想を捨て、利権に身をこがし,かつて格差の矛盾に義憤があったことも忘れ,抑圧する側に変わってしまう。今回、ウクライナ訪問し、コサックの精神はどこまで維持できるか、と黙想しながら、坂道を上ったり降りたりした。ボランティア道を極めるとは、自分の魂を富、権力、名誉心に明け渡さないことと言い聞かせる旅であった。

欧州から神戸まで共に帰国したウクライナ人と岩村氏(左端)

※「カヨ子基金」への寄付は以下のとおり。
郵便口座 14340-96549731    加入者名:カヨ子基金

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