【塀の中からハレルヤ!】(3) 弁護士として…信仰者として犯罪者と向き合う

「塀の中からハレルヤ」シリーズ第2回目で登場した安藤康雄さんの刑事弁護を担当した平塚雄三弁護士。安藤さんとの出会いをきっかけに、罪人の友主イエス・キリスト教会と関わっている。進藤龍也牧師に紹介された死刑囚との文通、面会などを通して、神への信仰によって、人を生まれ変わらせることを実体験しているという。平塚弁護士(ひばりが丘聖書教会員)に話を聞いた。

「僕なんかより、彼らの方がはるかに強くて、素晴らしい人たちだと思います」
平塚さんは、前科のある罪友教会のメンバーや面会や文通を通して交流のある死刑囚のことをこのように話す。

平塚さんの両親と祖父母もクリスチャンで、幼い頃、御茶の水キリストの教会に連れられていたという。

司法試験合格後、都心の一等地にある法律事務所で働く。ボスにもクライアントにも恵まれた環境でしたが、心の中では本来の居場所はここではないように感じていた10年でした,

転機は、今から三年前。生死を彷徨(さまよ)うほどの大病をした時だった。
家族の祈り、家族が所属している教会の祈りが平塚さんの心を動かした。「病気をした時だけでなく、何十年もみなに祈られてきたのだと感じました」と話し、病気を克服し、退院した後に洗礼を受けた。「長年、不義理をしていた放蕩(ほうとう)息子が帰ってきた…といったところですね」と笑う。

安藤さんと会ったのは、今から8か月前。初めて会った安藤さんは、平塚さんの前では作り笑いをしていたが、その実は正反対に、生きる希望を失いかけていることは直感で分かった。
刑事事件の被疑者は大勢見てきたがそういう感じさせる人は稀(まれ)。
人間安藤さんをきっかけに進藤牧師と会い、神の前で立ち帰り、正しい方向に更生していく人々と知り合った。「私も人生において深い悩みを抱えているが、がんばっている彼らを見ることで、自分もがんばれる気がする」と話す。安藤さんは、11月5日に1年6ヶ月の実刑判決が確定した。拘置所に面会に行くと、「毎日、デボーションしてますよ」と穏やかな笑顔を浮かべていたという。

拘置所中でやり直しを誓う。それなら事件を引き受けるよ。
コロナ禍で半年間の保釈期間 通常は起訴から公判まで1、2ヶ月。
本人の反省文などに当時のことが記載されています。お送りします。

平塚さんは数ヶ月前から、死刑囚と交流も始めた。進藤牧師と文通をしている死刑囚の一人だが、前科がある進藤牧師は、面会をすることができない。そこで平塚さんが代わって面会をしているのだという。平塚さんは、初めて面会したときのことをこう話している。

「たった30分の面会時間なのですが、はじめはなんと声をかけていいのかわかりませんでした。弁護士とはいえ、私も確定死刑囚と話すのは初めてだったので、少し緊張しました」

死刑囚の彼は、ふっくらした体つきで穏やかな口調で話し始めた。「とても人を殺(あや)めた人とは思えなかった」という。

何度か面会を重ねているうち、平塚さんが身の上話をすると、彼は涙ぐみ、「俺でよかったら、話をきくよ」と声をかけた。「どっちが励まされているのかわかりませんね」とほほ笑んだ。最近は、小さなお菓子を差し入れると、喜んで受け取るのだという。

昨年出版された進藤牧師の『元極道進藤牧師が聖書を斬る!マタイによる福音書(上)』(はるかぜ書房)を読み、深く感動した彼は、洗礼への導きを意識するようになった。そして、獄中で平塚さんと共に祈り、信仰告白まで導かれたという。「感動しました。進藤牧師がともにいられなかったのは、とても残念でしたが、これで彼は天国へ行くと確信しました」

一方で、日本の法律で裁かれた彼は、命をもって罪を償うことが確定している死刑囚でもある。いつかは「その時」がやってくるのを覚悟はしているが、最後まで一人の「兄弟」を天国へ送るため、面会は続けていくつもりだという。

【塀の中からハレルヤ!】(2) 薬物に手を染めた過去と対峙するとき 安藤康雄さん(仮名)

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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